2018 Fiscal Year Research-status Report
| Project/Area Number |
18K06566
|
|---|
| Research Institution | Microbial Chemistry Research Foundation |
|---|
Principal Investigator |
安達 勇光 公益財団法人微生物化学研究会, 微生物化学研究所 沼津支所, 主席研究員 (00250051)
|
|---|
| Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
| Keywords | がんの糖鎖 / ヘパラナーゼ / がんの増殖・浸潤・転移 / 薬剤耐性 |
|---|
| Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の目的は、「がん細胞の薬剤耐性の原因の一つと考えられているヘパラナーゼの分泌と酵素活性を指標とした阻害剤の探索系を構築し、それらを阻害する化合物を独自に開発した冬虫夏草代謝産物ライブラリーから探索し抗がん医薬品のシーズを獲得する」ことである。
平成３０年度の実施計画では、ヘパラナーゼの分泌を評価するためヘパラナーゼの高発現細胞の構築とヘパラナーゼの酵素活性を指標とした阻害剤の探索系の構築を目指した。このうち、ヘパラナーゼの酵素活性を指標とした阻害剤のスクリーニング系は構築まで間近となっている。
これらの系を用いた冬虫夏草菌代謝産物からの阻害剤スクリーニングは、これまで見当たらないことからユニークな構造を有する阻害剤の発見が期待される。
阻害剤スクリーニングの探索源となる冬虫夏草菌の継続的な収集とその代謝産物ライブラリーの拡充を図った。菌の多様性を確保するため、様々な場所から冬虫夏草の収集に努めた。代謝産物ライブラリーの拡充はヒット率の向上とヒット化合物の多様性の観点から重要である。
またヘパラナーゼ阻害剤の合成探索を行った。シアリダーゼ阻害剤として以前単離された天然物シアスタチンBを出発原料とし、ヘパラナーゼ阻害剤ヘパラスタチンの合成スキームを応用しヘパラスタチンの類縁化合物の合成を行った。合成した化合物の安定性についての多くの情報が得られたので今後の阻害剤のデザインの指針とする。
|
| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題では、がんの薬剤耐性を制御する方法として、「ヘパラナーゼの酵素活性の抑制」、「がん細胞からのヘパラナーゼの分泌の制御」の2点を挙げており、「ヘパラナーゼの酵素活性の抑制」の進捗については、冬虫夏草菌の代謝産物（ブロスサンプル）に適した阻害剤の探索系の構築が不可欠と考えられ、この点が解決されつつあり系の構築まであとわずかのところにこぎつけている。「がん細胞からのヘパラナーゼの分泌の制御」については、ヘパラナーゼcDNAの複数のヒトがん細胞株への導入を行ったが、細胞からの酵素の分泌が低くヘパラナーゼの分泌を評価できるレベルには至っていない、
ヘパラナーゼ阻害剤の合成探索については、 天然物シアスタチンBを出発原料として探索し、探索の過程でこれまでに活性を示すと予想されている化合物が、原料のシアスタチンBから短工程で得られる条件を見出すことができた。
|
| Strategy for Future Research Activity |
がんの薬剤耐性を制御する方法として挙げている「ヘパラナーゼの酵素活性の抑制」ついては、平成31年中に間もなく得られる予定のヘパラナーゼ阻害剤のスクリーニング系を用いることで、冬虫夏草菌代謝産物ライブラリーからの阻害剤のスクリーニングが可能になる。「がん細胞からのヘパラナーゼの分泌の制御」については、評価に十分なヘパラナーゼ量を分泌する細胞が得られていないので、まだ検討していないヒトがん細胞株へのヘパラナーゼcDNA導入を検討する。
申請課題に設定していた「メタンジアミン構造を含む両性イオン型認識構造を有する阻害剤の合成」では、目的化合物の安定性が悪く単離することができなかった。しかしながら、その合成の過程で、以前から活性を示すと予想されている化合物が出発原料から短工程で得られることを見出した。この化合物を足掛かりに、新たな誘導体合成へと展開する予定である。
|
| Causes of Carryover |
（理由）平成31年度に本研究で使用する高価なヘパラナーゼ酵素を複数購入する予定があり、そのための購入費用として繰り越した。
（使用計画）ヘパラナーゼ酵素阻害のスクリーニング系を構築する上で、複数の会社の酵素を購入し検討する。
|
Research Products
(1 results)
