2019 Fiscal Year Research-status Report
SDAモデルに基づき設計した部分フッ素化人工脂質/膜タンパク質複合体の開発
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18K06568
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
高木 俊之 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 主任研究員 (10248065)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
園山 正史 群馬大学, 大学院理工学府, 教授 (40242242)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 人工脂質 / ペルフルオロアルキル基 / 多重積層アレー双極子モデル / 膜タンパク質 / DPPC / DMPC |
Outline of Annual Research Achievements |
人工脂質のフッ素化は、物理的・化学的な安定性を付与し、膜タンパク質の組み込みにも有用であることを示してきた。人工脂質/膜タンパク質複合体構築に向けた高配向秩序で適度な膜流動性を有する人工脂質膜を、多重積層アレー双極子(SDA)モデルに基づき設計した部分フッ素化人工脂質を開発する。 昨年度、種々の条件検討により確立した部分フッ素化ジパルミトイルホスファチジルコリン(Fn-DPPC、n=6)の合成経路を基にペルフルオロへプチル(n=7、F(CF2)7)基の合成を行い、高純度のF7-DPPCを物性測定に必要な量(高純度かつグラムスケール)を合成することに成功した。また、同合成手法を用いることで、収量(収率)が課題であったF8-DPPCのグラムスケール合成にも成功し、物性測定に必要な量(高純度かつグラムスケール)を得ることが出来た。 部分フッ素化ジパルミトイルホスファチジルコリン(Fn-DPPC、n=4~8)を用いた膜物性および再構成膜の評価において、得られた実験結果を詳細に評価したところ、F4-DPPCにおいて非常に興味深い結果を得た。すなわち、F4-DPPCでは脂質膜の相転移により二次元結晶が崩れ、膜タンパク質バクテリオロドプシン(bR)が単量体に解離する点においてF4-DMPC(F4-ジミリストイルホスファチジルコリン)とは異なることが分かった。さらに脂質膜の熱物性(DSC:示差走査熱量測定)では大きな違いは見られないが、bRとの再構成膜では振る舞いには違いが生じ、フッ素化していない脂質(炭化水素系脂質)に近い特徴を示す結果を得た。脂質膜中のbRの挙動の観察は、部分フッ素化人工脂質の基盤技術開発において重要であることを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ペルフルオロへプチル(F(CF2)7、n=7)基を有するジパルミトイルホスファチジルコリン(F7-DPPC)をはじめ、F6およびF8-DPPCのグラムスケール合成に成功し、これまでの課題であった物性測定を行う上で必要な量(かつ純度)のFn-DPPCライブラリー(n=4~8)を準備することが出来た。これらの実験結果により、ペルフルオロへプチル(F(CF2)7、n=7)基を有するジミリストイルホスファチジルコリン(F7-DMPC)にも応用が可能となった。 また、これらのFn-DPPCライブラリーを用いた膜物性および再構成膜の実験結果から、F4-DPPCを用いた再構成膜が非常に興味深い評価結果を示すことが分かった。すなわち、部分フッ素化ジミリストイルホスファチジルコリン(F4-DMPC)と膜タンパク質バクテリオロドプシン(bR)との再構成膜(bR/F4-DMPC)実験結果と詳細に比較した結果、F4-DPPCでは脂質膜の相転移により二次元結晶が崩れ、bRが単量体に解離する点においてF4-DMPCとは異なることが分かった。 以上のことからおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き、見出した合成条件を基に、ペルフルオロアルキル(F(CF2)n、n=7)基を有するF7-DMPCのグラムスケール合成を行い、物性測定などを十分に行える量を持ち上げる。最終生成物であるF7-DMPCの純度が非常に重要であることから、物性測定の1つである視差走査熱量測定(DSC)の結果を基に最終生成物の高純度化を目指す。また、前年度に引き続き、膜タンパク質バクテリオロコプシン(bR)を用いた再構成膜(bR/Fn-DPPC)の解析を行う。さらにFn-DPMCライブラリーについても同様のbRとの再構成膜(bR/Fn-DMPC)の調製および機能評価を検討する。
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