2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K06570
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
谷内出 友美 東京大学, 定量生命科学研究所, 講師 (20401284)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 構造展開 / 構造活性相関 / 核内受容体 / 転写因子 / エピジェネティクス / 分解誘導 |
Outline of Annual Research Achievements |
ホルモン療法耐性乳がんは、未だ当該所望化合物の創製や治療戦略が確立されていない。そこで、この疾患に関与する増悪因子の直接分解を基盤とする医薬リードの創製を目的とし、これを達成すべく、平成30年度は研究計画の第一段階であるタンパク質分解誘導剤の創製および、第二段階の生物活性評価を遂行した。具体的には、乳がんに関与することが報告されている、核内受容体のエストロゲン受容体(ER)およびエピジェネティクスを制御するBET(bromodomain and extra-terminal)ファミリータンパク質であるBRD4を標的として選定し、それらタンパク質の分解を誘導する化合物を創製することを目指した。続いて、生物活性評価系の新規構築およびその系を用いた活性評価を行った。その結果、下記の成果を上げた。 (1) ERリガンドをデザイン・合成した。その際、ステロイドの代替骨格として当研究代表者等が報告しているdiphenylmethane骨格を母骨格とした。 (2) (1)で合成した化合物のER転写活性、ER結合試験を行い、さらに、ヒト乳がん細胞であるMCF細胞を用いた内在性ERの分解誘導活性を評価した。また、計算化学により得られた情報に基づく構造展開を行うことで、構造活性相関に関しても一定の解答を得ている。 (3) 当研究代表者の発見したN6-benzoyladenine骨格を有するBRD4阻害剤を基盤に、BRD4分解誘導剤をデザイン、合成した。 (4) (3)で合成した化合物について、BRD4結合試験および、白血病細胞であるHL-60細胞を用いた内在性BRD4の分解誘導活性を評価した。構造展開を行い、構造活性相関を解析中である。 (5)スクリーニングの効率化を図る目的で、ER-lucを安定発現した細胞株の樹立および、定量的かつハイスループットなER分解誘導活性評価系の構築を進行中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
乳がんの増悪因子として報告されている、核内受容体であるエストロゲン受容体(ER)およびエピジェネティクス制御因子であるBRD4を標的タンパク質として選定し、それらのリガンド合成に成功した。また、計算化学により得られた情報等に基づく構造展開研究および構造活性相関解析により、タンパク質分解誘導剤に関する重要な情報も得ることができた。さらに、スクリーニングの効率化を図る目的で構築中の、定量的かつはいスループットなタンパク質分解誘導活性の評価系は、従来のWestern blottingの代替検出法になり得ることが期待される。以上より、当初の予定通りに研究課題を進展させることができていると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究で蓄積したデータを十分に踏まえた上で、次年度は、引き続き第一段階のタンパク分解誘導剤の創製、および第二段階の合成化合物の生物活性評価と応用展開研究、第三段階の作用機序解析を並行して遂行する。具体的には、得られた構造活性相関の情報を基に、選択的ERダウンレギュレーター(SERD)およびBRD4分解誘導剤(BRD4 SNIPER)等を創製する。これにより、現在欠如しているこれら分解誘導剤の医薬化学的・生化学的情報を付与する。さらに、研究の進捗を観ながら、各現象に関与する作用機序を解析する。具体的には、ユビキチンプロテアソーム系(UPS)等への関与や三者複合体(BRD4と、BRD4分解誘導剤と、ユビキチンE3リガーゼ)の形成を検討する。 本研究計画は、当研究代表者らの発見した生物活性を有するリガンドの構造活性相関を基に、タンパク質の寿命を制御する化合物の創製を図るといううものであるので、それらを十分に生かして順調に進められると考えているが、仮に計画している標的タンパク質に対する分解誘導剤が創製できない場合は、適宜軌道修正する。具体的には、生体内機能の縮重性に着目し、標的を関連因子に随時シフトさせる。例えば、UPSを誘導するE3リガーゼをIAPからセレブロンへシフトすることを考えている。本研究の目的は、新たな治療戦略としての疾病増悪因子の直接分解であるため、この軌道修正も意義のある展開になると考える。以上一連の研究により、従来のホルモン療法では明確な治療効果が期待できず、当該所望化合物の創製・治療戦略は確立していないホルモン療法耐性乳がんなどの治療戦略を提案することを目指す。
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