2018 Fiscal Year Research-status Report
Organic chemistry using acetal-type salt species
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18K06576
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
藤岡 弘道 大阪大学, その他部局等, 名誉教授 (10173410)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ピリジニウム型塩化学種 / 官能基選択的脱アセタール化 / ホスホニウム塩化学種 / in situ protection法 / エノン / 不斉ジヒドロキシ化 / 環状エーテル化合物 |
Outline of Annual Research Achievements |
A)ピリジニウム型塩化学種を利用する有機合成化学:これまでの研究で、ピリジニウム型塩化学種の生成はNMR実験並びに質量分析により証明し、その後の変換反応を明らかにしたが、アセタールからピリジニウム型塩化学種生成の過程は不明であった。今回、その過程を明らかにした。即ち、アセタールからピリジニウム型塩化学種生成の真の活性種は、TMSOTfとピリジン塩基からなる嵩高い複合体で有ることを証明した。次に本複合体を、立体識別的アセタールの脱保護に利用した。即ち、アセタールの隣の炭素の置換様式が異なるアセタールの脱保護を検討し、より置換基が少ないアセタールの選択的脱保護に成功した。従来のオキソニウムイオン中間体を経る脱保護では、より安定なオキソニウムイオン中間体を経る脱保護が速く進行するため、隣の炭素の電子供与性が大きい、すなわちより多くの置換基を持つ炭素原子を持つアセタールの脱保護がより速く進行する。一方、我々の手法では嵩高い酸活性種が働くため、より立体的な混みあいの小さいアセタールで選択的に脱保護が進行する。従来法とは逆の反応性を持つアセタールの脱保護法を開発できた。 B)ホスホニウム塩化学種を利用する有機合成化学: In situ protection法を用いて、エノンとα,β‐不飽和エステルを併せ持つ鎖状化合物から環状エーテル化合物をone-potで合成する効率的な手法を開発し、次に不斉合成への展開の鍵反応として不斉ジヒドロキシ化を用いたが、一般に用いられる市販されているAD-ミックス触媒を用いられず、化学量論量の不斉触媒を用いる必要があった。本年度は、更に検討を重ね、我々のin situ protection法に用いるホスフィンの種類を変えることにより、触媒量のAD-ミックス触媒を用いて不斉合成を行う、より簡便な手法を確立した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで不明であったアセタールからのピリジニウム塩化学種生成の真の活性種が、R3SiOTfとピリジン塩基の複合体で有ることを明らかにした。さらにこの結果を利用して、アセタールの立体識別的脱保護を達成できた。本成果は、本研究の塩化学種を用いる有機合成化学のより基礎的な研究であり、今後の更なる研究の展開を約束するものである。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究により、ピリジニウム塩化学種生成の真の活性種が、R3SiOTfとピリジン塩基の複合体で有るという、より基礎的な知見や経験を得ることが出来たので、官能基選択的反応への更なる展開を図る。またin situ protection法を利用した効率的な環状エーテル合成法の不斉合成への展開で、市販のAD-mixを触媒量用いる、より簡便な手法を確立できたので、光学活性環状エーテル構造を含む生物活性天然物合成への応用を検討する。
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Causes of Carryover |
本年度は、ピリジニウム塩生成の真の活性種が、シリルトリフラートとピリジン塩基との複合体で有るという興味深い知見が得られた。この結果は全体の計画に新たな新規性を加えることができるため、優先的に検討したが、基質や反応剤に関しては、限られた基質や反応剤での検討を行ったため、物品費の繰り越しがあった。次年度は、本年度の知見の天然物合成への応用も目的として研究を行うため、そこでの経費などに充てる。
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