2019 Fiscal Year Research-status Report
触媒的連続ラジカル変換を基盤とする生物活性多環天然物の合成戦略開拓
Project/Area Number |
18K06578
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
好光 健彦 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 教授 (30301576)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ラジカル反応 / 天然物 / 全合成 / カスケード / キノンレドックス / 可視光レドックス触媒 / 創薬 |
Outline of Annual Research Achievements |
化学構造の多様性を特徴とする多環天然物骨格は、創薬ケミカルスペースをはじめとする機能性物質群における重要なモチーフのひとつである。フリーラジカル種が誘起する連続変換反応(ラジカルカスケード反応)は、こうした多環分子骨格を短工程で与える強力な手法となり得る。本研究では、低環境負荷・省エネルギー触媒プロセスからなるラジカルカスケード反応を基盤として多環分子骨格の新たな構築法を開発するとともに、魅力的な創薬資源として注目を集める生物活性天然物の人工的創製に挑んだ。 本年度においては、前年度から継続して課題1) 及び2) に関する研究を推進した。すなわち、1) 連続したラジカル種の変換を基軸とする多環分子骨格構築手法の開発と、その活用による抗ウイルス活性海洋産天然物 hamigeran B の全合成、2) 触媒的連続ラジカル環化を鍵とするホスファチジルイノシトール3-キナーゼα(PI3Kα)阻害活性天然物 liphagal の全合成である。課題1) については、先の研究で確立した可視光レドックス触媒存在下でのラジカル付加環化反応による新規テトラリン形成法にさらなる条件検討を加え、副反応の抑制と収率の向上に成功した。また、hamigeran Bの全合成経路の開拓を進め、すべての環構造を備えた合成中間体を得ることに成功した。課題2)に関しては、前年度の研究によって発見した新規キノン-ヒドロキノンレドックス条件下での遷移金属触媒反応を経由する新規ベンゾフラン合成法の条件の最適化に成功した。さらに、本手法を鍵として目的とするliphagal の新たな全合成経路の開拓に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
可視光レドックス連続ラジカル付加環化反応を開発することに成功した一方で、目的とするhamigeran Bの全合成には至っていない。しかし、既にhamigeran Bの基本骨格を有する合成中間体を得ており、本年度におけるさらなる検討によって目的を達成し得ると考えている。一方、liphagalの全合成研究においては、当初計画していなかった新反応に遭遇し、これによって独自性の高い目的天然物の新たな合成経路の確立に成功した。以上のように、必ずしも当初の計画通りというわけではないものの、触媒的ラジカル連続変換(ラジカルカスケード)の新規方法論の開拓とその活用を基盤とする生物活性天然物の化学合成において、新知見を含む成果を得ることに成功している。従って、以上の状況から、研究の進捗についてはおおむね順調であると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究がおおむね順調に進んでいることから、当初立案した計画に著しい変更はない。本年度においては、本研究の主目的のひとつである可視光レドックス触媒存在下での連続ラジカル付加環化反応による抗ウイルス活性天然物hamigeran Bの合成経路の確立を目指す一方で、先に得たキノン-ヒドロキノンレドックスと遷移金属触媒の協同による新規分子変換反応の更なる開発をも視野に入れた研究を推進する。
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Causes of Carryover |
2020年3月開催予定であった日本薬学会第140年会(京都)が中止となり、その学会参加に関する経費が不必要となったため。本経費については次年度の学会参加費等に充当する。
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