2019 Fiscal Year Research-status Report
狭域抗菌スペクトルを有する10-14員環融合型ジマクロライドの全合成と活性の検証
Project/Area Number |
18K06586
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
廣瀬 友靖 北里大学, 感染制御科学府, 准教授 (00370156)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | Luminamicin / 10員環ラクトン / 14員環ラクトン / リレー合成 |
Outline of Annual Research Achievements |
Luminamicinは北里研究所において、Streptomyces sp. OMR-59株の培養液より嫌気性菌、特にC. difficileに選択的な抗菌活性を示す化合物として見出された。C. difficileは抗生物質投与による治療で腸の常在菌のバランスが崩れた際に異常に繁殖し、毒素の生産によって腸内に偽膜を伴う下痢症を引き起こす。そのため、既存薬に代わる新たなC. difficile選択的抗菌薬の開発が望まれている。本研究ではLuminamicinの構造活性相関解明にも視野にいれた全合成研究に着手した。 前年度までにLuminamicinのシスデカリン環と10員環ラクトン部分の構造ユニットとのカップリングに成功している。今年度はその中間体から10員環ラクトン部分の構築を達成した。さらに上部14員環ラクトン部分の構築を確立するため、その全合成中間体を天然物より誘導化することを試みた。すなわち、北里研究所では、微生物培養から天然物Luminamicinの供給が可能であることから、リレー合成による全合成達成を目指す戦略を立案した。天然物からの化学的分解反応によってシスデカリン環を有する10員環ラクトンを調製する一方で、その同化合物を全合成経路をから合成した。天然物からの分解物と全合成ルートから合成した同化合物の各種機器データは完全に一致したことから、Luminamicinのシスデカリン環と10員環ラクトン部の構築法を確立することに成功した。 最終年度ではシスデカリン環と10員環ラクトン部を有する中間体から上部14員環ラクトン部分の構築法を確立することで、その全合成を達成できると期待する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
北里研究所では、微生物培養から天然物Luminamicinの大量供給が可能であることから本全合成の戦略として、リレー合成を取り入れた。すなわち、天然物から化学的分解反応によって鍵中間体であるシスデカリン環を有する10員環ラクトン部分を合成し、その基質から天然物を合成する経路を確立する戦略である。一方で、これまで通り全合成的アプローチでシスデカリン環を有する10員環ラクトン部分を合成できれば効率的にLuminamicinの全合成を達成可能と考えた。 リレー合成の鍵となるシスデカリン環を有する10員環ラクトン部分の合成では、歪んだ3置換オレフィンを含む10員環ラクトンの堅牢な手法としてマクロラクトン化法を用いた。前年度では10員環ラクトンの構成成分である三連続不斉中心ユニット とシスデカリン環部が有するアルデヒド体とのユニットカップリングを達成していたため、今年度ではその後の10員環ラクトンの構築を検討した。 まずは、10員環ラクトンの前駆体であるセコ酸を調製した。その後、椎名マクロラクトン化の条件でマクロラクトン化の検討を行ったところ、セコ酸を加熱した反応試薬溶液に徐々に滴下することで中程度の収率で10員環マクロラクトン体を得ることに成功した。 一方で、シスデカリン環を有する10員環ラクトン体をLuminamicinから調製するため、Luminamicin生産菌を培養し、751 mg取得した。そして天然物の無水マレイン酸構造をジエステルへと変換し、14員環ラクトンの選択的開環に次ぐ共役したエノールエーテルの加水分解によって鍵中間体であるシスデカリン環を有する10員環ラクトン部分を得た。そして天然物からの分解と全合成的に合成したシスデカリン環を有する10員環ラクトン体の各種スペクトルは完全に一致した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度の研究推進策としては、今年度確立した天然物Luminamicinからの分解による全合成鍵中間体(シスデカリン環を有する10員環ラクトン部分)を必要量調製するため、微生物培養からLuminamicinの大量取得を行い、その鍵を中間体を十分量(約1g)合成する。そして、その中間体を用いて、Luminamicin上部に相当する無水マレイン酸共役ビニルエーテルを有する14員環ラクトン再構築法の確立を検討し、最終的にはLuminamicinの全合成ルートの確立を行う。 Luminamicinは上部14員環内の無水マレイン酸に共役するビニルエーテル部分は合成最終段階において安定なフランユニットのエステル化および酸化に続くOxa-Mihael反応で合成できると考えている。そして、リレー合成の鍵となるLuminamicin中央部の10員環ラクトンと下部シスデカリンパートを合わせ持つ中間体においては、歪んだ3置換オレフィンを含む10員環ラクトンの堅牢な手法としてマクロラクトン化により合成出来ている。しかし、その変換効率に課題が残されており、全合成達成のためには、10員環ラクトン化とラクトンカルボニルのα位酸化の収率向上が必須である。その最適化を、縮合剤、酸化剤、塩基などの適した試薬の探索、反応条件の検討により進めていく。 上記の鍵中間体から上部の構築に関しては、当研究室において14員環ラクトン部分のモデル基質の合成を完了している。よってLuminamicin上部14員環を合成をモデル基質で確立した方法を基盤、実際の基質に適した反応条件を調製することでその合成が効率的に確立を出来ると考えている。 上記の計画が達成できればLuminamicinの全合成が完了する。
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Research Products
(36 results)
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[Journal Article] Kozupeptins, Antimalarial Agents Produced by Paracamarospurium Species: Isolation, Structural Elucidation, Total Synthesis, and Biological Activity2019
Author(s)
Yumi Hayashi, Wataru Fukasawa, Tomoyasu Hirose, Masato Iwatsuki, Rei Hokari, Aki Ishiyama, Masahiro Kanaida, Kenichi Nonaka, Tatsuya Shirahata, Kazuhiko Otoguro, Yoshinori Kobayashi, Kazuro Shiomi, Satoshi Omura, Toshiaki Sunazuka
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Journal Title
Org. Lett.
Volume: 21
Pages: 2180-2184
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Jietacins, azoxy natural products, as novel NF-kB inhibitors: discovery, synthesis, biological activity, and mode of action2019
Author(s)
Mariko Watanabe, Akihiro Sugawara, Yoshihiko Noguchi, Tomoyasu Hirose, Satoshi Omura, Toshiaki Sunazuka, Ryouichi Horie
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Journal Title
Eur. J. Med. Chem.
Volume: 178
Pages: 636-647
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Fusaramin, an antimitochondrial compound produced by Fusarium sp., discovered using multidrug-sensitive Saccharomyces cerevisiae2019
Author(s)
Katsuyuki Sakai, Yufu Unten, Masato Iwatsuki, Hirotaka Matsuo, Wataru Fukasawa, Tomoyasu Hirose, Takumi Chinen, Kenichi Nonaka, Takuji Nakashima, Toshiaki Sunazuka, Takeo Usui, Masatoshi Murai, Hideto Miyoshi, Yukihiro Asami, Satoshi Omura, Kazuro Shiomi
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Journal Title
J. Antibiot.
Volume: 72
Pages: 645-652
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Azithromycin, a 15-membered macrolide antibiotic, inhibits influenza A(H1N1)pdm09 virus infection by interfering with the virus internalization process2019
Author(s)
Tran Huu Dat, Ryuichi Sugamata, Tomoyasu Hirose, Shoichi Suzuki, Yoshihiko Noguchi, Akihiro Sugawara, Fuyu Ito, Tomoko Yamamoto, Shoji Kawachi, Kiyoko S. Akagawa, Satoshi Omura, Toshiaki Sunazuka, Naoki Ito, Masakazu Mimaki, Kazuo Suzuki
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Journal Title
J. Antibiot.
Volume: 72
Pages: 759-768
DOI
Peer Reviewed
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