2018 Fiscal Year Research-status Report
分子動力学計算と情報科学的解析による、ALK遺伝子変異に伴う薬剤応答性予測
Project/Area Number |
18K06594
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
荒木 望嗣 京都大学, 医学研究科, 特定准教授 (10452492)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 非小細胞肺がん / ALKキナーゼ / 薬剤耐性変異 / 分子動力学シミュレーション / タンパク質-化合物結合親和性 / 統計解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、非小細胞肺がん(NSCLC)の薬剤耐性に着目し、anaplastic lymphoma kinase(ALK)遺伝子変異に伴う分子標的薬剤の応答性変化をコンピューター上で高精度に予測する事を目的としている。 H30年度は、ALKタンパク質変異体とALK阻害剤3種類の結合シミュレーションを実施した。まず、ALK阻害薬に対して薬剤耐性を引き起こす事が知られている既知のALK遺伝子変異情報とALK familyの一次配列情報を利用して、薬剤結合に影響を与えうるアミノ酸を89種類抽出した。続いて、ALKタンパク質(野生型)とALK阻害薬(crizotinib, alectinib, ceritinib)の共結晶構造に基づいて1アミノ酸置換体180種の立体構造モデリングを行ったのち、水中でのタンパク質-薬剤結合の動的性質を評価するために、ALK変異体-薬剤複合体の分子動力学シミュレーションを実施した。1単位のシミュレーション時間は50nsとし、ALK変異体-薬剤1ペアに対して原子初速度を変化させて独立に3本実施した。シミュレーション時間の合計は81μs(=50ns×3×180変異体×3薬剤)であった。今後、これらのシミュレーションデータを統計解析し、薬剤応答性に重要に関わる特徴量を抽出するとともに、薬剤応答性を優位に低下させる変異体群を予測する予定である。 更に、標的タンパク質に対する分子標的薬応答性を精密に予測するシミュレーション手法を開発して論文発表すると共に、NSCLCにおける薬剤耐性獲得メカニズムに関する総説を発表した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、ALKタンパク質変異体-薬剤複合体540ペア(=180種類×3薬剤)の各々に対して分子動力学シミュレーションを実施した。これらは比較的大規模な計算量であったが、、「京」コンピューター(ポスト「京」研究開発枠)を利用して並列実行する事で、全てのシミュレーションが予定通り完了した。
|
Strategy for Future Research Activity |
H31年度はALKタンパク質変異体180種の分子動力学シミュレーションデータを野生型ALKのシミュレーションデータと比較する事で、薬剤応答性に重要に関わる特徴量を抽出し、薬剤応答性を優位に低下させる変異体群を予測する。具体的には、下記2項目を実施する。 ①:ALKタンパク質-薬剤間の水素結合エネルギー、van der Waalsコンタクト、およびポケット内部での薬剤の平均結合位置やゆらぎを説明変数とし、野生型ALKと同等以上の薬剤応答性を有する変異体と薬剤応答性が顕著に低下する変異体を分類するための多変量解析を行う。 ②:①の結果に基づいて重要度が高い説明変数を抽出するとともに、野生型と比較して薬剤応答性を優位に低下させる薬剤耐性変異体候補を選抜する。
|
Causes of Carryover |
ALK変異体-薬剤複合体の大規模分子動力学シミュレーションデータを解析するために、比較的演算能力の高いワークステーション(165万円)をH30年度に購入する予定であったが、これらの解析はH31年度に実施する予定であるため、ワークステーションの購入を翌年度に繰り越した。
|