2018 Fiscal Year Research-status Report
過飽和形成製剤と直接的皮膚侵襲の組合せによる経皮的薬物送達法の開発基盤の構築
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18K06595
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
黒崎 勇二 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 教授 (90161786)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 抗マラリア薬 / N-251 / 固体分散体 / マイクロニードル / 皮膚透過障壁 / 角質層侵襲 / L-HPC含水ゲルシート / 経皮適用型製剤 |
Outline of Annual Research Achievements |
患者自身が投与できる皮膚適用製剤は、特に医療環境に恵まれていない地域で開発が求められている製剤である。しかし、難溶性薬物の経皮的薬物送達において、薬物の溶解性の改善と薬物の皮膚透過の促進 が医薬品開発上の最大の障壁となっている。 本研究では、難溶性薬物モデルとして新規抗マラリア候補化合物(N-89 および N-251)を選び、(1) 固体分散体化による過飽和形成製剤の調製、(2) マイクロニードルによる皮膚の薬物透過障壁能の一過性の減弱の両者を組み合わせた薬物送達法の開発基盤の構築を目指すものであり、平成30年度に以下の検討を行った。 1) N-251と水溶性高分子との固体分散体の調製:新規抗マラリア候補化合物(N-251)と水溶性高分子を共溶媒中で溶解し、溶媒法でモデル化合物の固体分散体を調製した。固体分散体の形成は、X-線回折装置および示差走査熱量計により確認できた。調製した固体分散体のN-251の溶解度は増大し、比較的安定な過飽和の形成が確認できた。 2) マイクロニードルによる皮膚の薬物透過障壁能の一過性の減弱の評価:皮膚の薬物透過障壁能を人為的に一過性に低下させる手法として美容領域で市販されているマイクロニードルを用いた角質層の侵襲の効果について、水溶性蛍光モデル化合物を用いて予備的な評価を試みた。薬物透過実験にヘアレス・ラットの摘出皮膚(市販品)を使用できる目途がついた。色素を用いた皮膚表面の染色により形態学的なマイクロニードルによる角質層の侵襲の評価の可能性が見出せた。 3) L-HPC含水ゲルシートによる薬物適用皮膚面のドレッシング:先行研究(Int. J. Pharm. 2014)のL-HPC含水ゲルシートへのナノファイバー成分の配合と含浸させる水溶性溶媒の組成がゲルシートの機械的特性ならびに水分保持特性に及ぼす影響について検討を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(Ⅰ)N-251と水溶性高分子との固体分散体の調製 については、順調に成果が出ており、予備的な知見を国際学会で発表できた。 (Ⅱ)マイクロニードルによる皮膚の薬物透過障壁能の一過性の減弱の評価 については、マイクロニードルを用いた角質層の侵襲処理の手法もほぼ確立できた。一方で、水分蒸散の亢進の評価については未着手となっている。 (Ⅲ)L-HPC含水ゲルシートによる薬物適用皮膚面のドレッシング については、順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
(Ⅰ)試作したN-251と水溶性高分子との固体分散体の中から溶解特性と過飽和状態の維持時間に優れる有望な固体分散体を選び、皮膚表面での溶解に必要な水分量について検討を進める。 (Ⅱ)マイクロニードルによる皮膚の薬物透過障壁能の一過性の減弱の評価 については、(Ⅰ)で調製したN-251-固体分散体を用いて、N-251の皮膚透過の改善についての検討を開始する。さらに、水分蒸散の亢進を評価し、(Ⅲ)L-HPC含水ゲルシート被覆(薬物適用皮膚面のドレッシング)がN-251の皮膚適用製剤化につながる手段となり得るか、薬物動態学的・治療学的見地からの検討を進め、今年度あるいは最終年度で研究成果の国内/国際学会での発表を目指す。
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Causes of Carryover |
研究の進捗と、皮膚の薬物透過性評価に使用するフランツセルの追加発注(海外発注)の時期の見極めが必要となったため残額が発生した。残額については次年度の物品費および旅費として使用する計画である。
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