2019 Fiscal Year Research-status Report
タンパク質のリン酸化状態から疾患の病態をプロファイリングするシステムの開発
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18K06596
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
木下 恵美子 広島大学, 医系科学研究科(薬), 助教 (40379912)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | phos-tag / リン酸化 |
Outline of Annual Research Achievements |
多くの細胞内タンパク質は,リン酸基の着脱によって機能のオン・オフが制御されている。その制御は極めて厳密で,一つのタンパク質に対して複数のキナーゼやフォスファターゼが関わり,秒単位でリン酸化状態を変化させる。したがって,タンパク質のリン酸化状態は細胞がおかれた状態を反映するものであり, それを解析することは疾病の原因究明や治療薬の開発,個別化診断・治療につながると考えられる。申請者は,現在までにリン酸基捕捉分子のPhos-tagを利用した親和性電気泳動法(Phos-tag電気泳動)を用いて,細胞シグナル伝達分子をはじめとした疾患関連タンパク質の細胞内リン酸化状態を調べてきた。Phos-tag泳動パターンは多くの場合バーコードのように複雑で,疾病による遺伝子変異などでそれは変化する。本研究では,各種の疾患関連タンパク質、とくに細胞内シグナル伝達を行うMAPK経路、PI3K/Akt 経路、細胞骨格系タンパク質群、細胞周期を制御するタンパク質群などにおいて、細胞がおかれた環境の変化に対するリン酸化応答をPhos-tag SDS-PAGE を用いて解析し、その画像パターンを収集している。これまでに確立された手法で十分に解析されてた重要なタンパク質であっても、ほとんどのタンパク質において,Phos-tag によってはじめて明らかにされるリン酸化状態が多く存在していることが明らかになってきた。とくに興味深いリン酸化ダイナミクスを示すタンパク質も発見しているので、それについてさらに深く解析を進めるために情報収集を行なっている。集積した多くの画像データの利用法としては、各種疾患における泳動パターンを解析済みのデータと照合することで,疾患の原因や病態をプロファイリングするという新たな診断システムの開発につなげたい。そのために,収集した画像データのデータベース公開の準備を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
疾患関連タンパク質のなかでも重要なシグナル伝達経路を構成する主要なタンパク質,あるいは遺伝子変異と疾病の関連が報告されているタンパク質のリン酸化状態についてPhos-tag泳動パターンを収集している。特に,MAPKシグナル伝達,PI3K/Akt シグナル伝達,細胞骨格制御タンパク質群,細胞周期関連タンパク質群などについては,優れた市販の抗体を利用できるため,順調にパターンの収集が進んでいる。これまでに集積した画像データをhttp://phostag.hiroshima-u.ac.jpにおいて順次公開しているところである。 さらに,Srcチロシンキナーゼファミリーなど,翻訳と同時にミリストイル化を受けるタンパク質について,ミリストイル化とリン酸化の関連性が示唆されるタンパク質があることがわかり,Phos-tag SDS-PAGEを用いて,ミリストイル化に依存したリン酸化状態の変化などについて解析している。Srcチロシンキナーゼファミリーの中でLYN がミリストイル化依存的にセリン13がリン酸化されるということを発見し,その責任キナーゼがカゼインキナーゼI であることを同定することができた。したがっておおむね順調に進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
様々な細胞内タンパク質のリン酸化状態のパターンの収集を行い,これまでに集積した画像データをhttp://phostag.hiroshima-u.ac.jpにおいて順次公開する。タンパク質名から画像を検索できる機能などを付随させ,データベースとして利用できるように整備していく。Srcチロシンキナーゼファミリーの中でLYN がミリストイル化依存的にセリン13がリン酸化されるということを発見し,その責任キナーゼがカゼインキナーゼI であることがわかったが,6つのカゼインキナーゼIのアイソタイプのうち,どれが責任キナーゼであるかを検討する。また,セリン13リン酸化の生物学的意義について追求する。
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Causes of Carryover |
旅費や謝金に予定していた予算が削減でき,次年度使用額が生じた。最終年度はさらに研究が展開されるので,旅費や謝金に大いに活用させていただき,研究を効率よく進める予定である。
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