2019 Fiscal Year Research-status Report
P2X4に対する高親和性抗体を利用した痛みを抑制する誘導体化抗体の開発
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18K06597
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
阿部 義人 九州大学, 薬学研究院, 准教授 (60315091)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山下 智大 九州大学, 薬学研究院, 助教 (30645635)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | P2X4 / 抗体 / 神経障害性疼痛 / タンパク質化学 |
Outline of Annual Research Achievements |
ATP作動性のイオンチャンネルであるP2X4は、ATP結合に連動したCa2+流入によってミクログリアの活性化を引き起こし、外科手術、癌、糖尿病および感染症等による末梢神経の損傷後に発症する神経障害性疼痛に関与することが報告されている。われわれは以前より、このP2X4に対する高親和性特異的抗体を作成しており、昨年度、その結果を論文として報告した。本研究計画では、本抗体を利用したP2X4の機能抑制抗体の創製を目的とした。 我々は昨年度に大腸菌から時間や手間暇のかかる巻き戻し系を使わずに、可溶性Fabを調製できる方法を確立し、本年度はさらにアミノ酸変異を加えることにより、可溶性Fabの回収量を6~7倍増やした発現系を構築した。また、昨年度すでにシステイン変異体を一部作成していたが、さらに今回調整法を確立した可溶性Fabを用いたシステイン変異体を作成した。作成したシステイン変異体を使った化学修飾試薬の反応効率の解析から、変異部位によって、化学修飾の効率が変わることもわかった。作成したシステイン変異体はMaleimido-C3-NTAによって修飾し、銅を加えた状態で、P2X4への結合活性を測定したが、期待した結合力の上昇は現時点で見られていない。ATP加水分解酵素と架橋試薬でつないだFabは、収量は少ないながらも作成できることを確認しており、今後その収量の増加目指して検討をしていく予定である。ATP加水分解酵素に関しては、シンガポール大学理学部のKini R Manjunatha教授のもとに伺い、その発現系に関してアドバイスをいただいた。また、本研究項目とは直接の関わりはないが、タイチュラロンコン大学薬学部Phoolcharoen, W准教授とともに、植物発現による抗PD1抗体の構造解析を行なった。また、可溶性Fabを調製する方法は国際学会で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現時点で、大腸菌による可溶性Fabの調製は変異導入によって、収量の増加まで含めてはるかにうまく行っている。一方、FabとATP加水分解酵素の化学修飾による架橋効率の検討を行っているため、誘導体化抗体の調製の進行がやや遅れている。本誘導体化抗体の調製、精製がうまくいき次第、細胞を使った機能抑制効果の検討を行えるように、共同研究者の山下と現在話している。
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Strategy for Future Research Activity |
ATP加水分解酵素との架橋においては、システイン変異体における変異部位および架橋試薬の種類が、架橋の効率に大きく関わってくることが現在わかってきた。よって、今後これらの検討を行うことで、誘導体化抗体の収量を上げていく工夫をしていく。金属結合型の誘導体化抗体では、現時点の結果を踏まえ、問題点(化学修飾率、金属キレート率)を解決していく。また、これらの誘導体化抗体の調製がうまくいき次第、できれば、ラットミクログリア細胞を使った機能抑制効果の検討を行う。
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Causes of Carryover |
システイン変異体における変異部位および架橋試薬の種類が、架橋の効率に大きく関わってくることがわかったため、架橋効率の検討を行なっており、細胞実験にかかる費用が本年度は多少かからなくなった。よって次年度使用額が生じた。この次年度使用額は現在行なっている誘導体化抗体の調製のためおよび今後行う細胞実験のための消耗品費として利用する。
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Research Products
(3 results)