2018 Fiscal Year Research-status Report
線維組織を足場とする放出制御型ナノ粒子による肺がん及び肺線維症治療システムの創製
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18K06603
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Research Institution | Hokkaido University of Science |
Principal Investigator |
戸上 紘平 北海道科学大学, 薬学部, 准教授 (20582357)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 肺線維症 / リポソーム / コラーゲン / 細胞外マトリックス |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は、肺線維症治療の最適化を指向した肺投与型DDSの開発を目的に、薬物輸送担体である様々な脂質組成のリポソームの最適な脂質組成について検証した。肺線維症は、不可逆性の線維化により蜂巣肺を形成し、呼吸機能の低下をきたす難治性疾患である。線維化の発症には、炎症などの肺胞の障害に対する修復機構であるTGF-β1誘発性のコラーゲン産生が過剰となることが原因となる。この発症、進行及び増悪過程には、肺線維芽細胞の遊走、増殖及び分化が深く関与している。そのため、線維組織を構成するコラーゲンや肺線維芽細胞へ抗線維化薬を送達することが、特発性肺線維症の治療戦略となる。そこで、まず最初にコラーゲン及び肺線維芽細胞への送達効率に優れたナノ粒子製剤を創製すべく、最適なリポソーム製剤の構築に着手した。リポソームは、主成分とする脂質:コレステロール:DSPE-PEG2000 =7:2:1(モル比)の脂質組成とし、薄膜水和法により調製した。主成分とする脂質には、DPPC、DOTAPおよびDPPSなどの様々な電荷を有するものを選択した。主に、肺線維芽細胞における分布特性、線維組織を構成するcollagen Iへの付着性、薬物放出性について評価したところ、DOTAPを主成分とするカチオン性リポソームがそのすべてが最も優れていることが明らかとなった。現在、抗線維化薬を封入したリポソームを調製し、ブレオマイシン誘発性肺線維症モデル動物におけるリポソームの送達効率などを検証している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた検討順番とは異なるものの、目的を達成するための製剤構築について必要な知見を得ることができた。また、予定よりやや早くin vitro実験系による機能評価を始めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度は具体的に治療に用いる予定の薬物を構築した製剤に効率よく封入する方法について検討する。また、製剤自身の動態特性を損なわずに薬物の放出制御を行う方法について検証を始める。主に、肺組織や肺の細胞レベルでのリアルタイムな薬物動態を評価する予定である。
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Causes of Carryover |
必要な薬物の測定機器(HPLC関連機器)を購入する予定であったが在庫状況の関係から、平成30年度内の購入が困難であった。購入のための研究費を次年度使用額として残し、2019年度にすぐ購入した。
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