2019 Fiscal Year Research-status Report
B型肝炎ウイルスの肝細胞侵入および増殖機構の構造生物学的解析
Project/Area Number |
18K06606
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
横川 真梨子 慶應義塾大学, 薬学部(芝共立), 講師 (60648020)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大澤 匡範 慶應義塾大学, 薬学部(芝共立), 教授 (60361606)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | B型肝炎ウイルス / キャプシド / NTCP / 無細胞タンパク質合成 / タンパク質-タンパク質相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
B型肝炎ウイルス(HBV)が肝細胞に特異的に侵入する分子機構、およびHBVが宿主の肝細胞内で増殖する分子機構を構造生物学的に明らかにすることにより、HBVの肝細胞への侵入や宿主細胞内での増殖の阻害という新たな作用点を持つ画期的抗HBV薬を創製することを目指している。 本年度は、前年度に引き続きHBVの受容体であるNTCPの調製法確立を行った。無細胞タンパク質合成系にて不溶性画分として合成したNTCPを界面活性剤により可溶化し、HBVの外殻タンパク質のpreS1領域との相互作用解析を行ったが、調製したNTCPはpreS1結合活性を持たないことが分かった。そこで、無細胞タンパク質合成の反応液に脂質と界面活性剤を添加し、透析しながら合成反応を行うことで、NTCPをプロテオリポソームとして調製した。調製したNTCPリポソームがpreS1結合活性を有することを、共沈降実験により確認した。今後、preS1とNTCPリポソームの相互作用の溶液NMR解析を行い、preS1上のNTCP結合残基およびNTCP結合時のpreS1の立体構造を解明する。また、リポソーム中のNTCPのNa+・胆汁酸共輸送活性を確認する。 HBVの増殖に重要なキャプシドとLHBsの相互作用については、キャプシドと結合するLHBsの残基をさらに絞り込むため、preS1、preS2を短くしたペプチド5種の大腸菌発現系を構築し、解析に必要な量のペプチドを調製した。今後、溶液NMR法と等温滴定型カロリメトリーを用いて、各ペプチドとキャプシドの相互作用様式を定量的に明らかにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
PreSとNTCPの相互作用による肝細胞侵入機構の解明について、無細胞タンパク質合成系を用いて不溶性画分として合成したNTCPを界面活性剤で可溶化した場合は、preS1結合活性がほとんどないことが分かったため、NTCPの調製方法の変更が必要になった。そこで、反応液に脂質と界面活性剤を添加して透析を行いながらNTCPを合成することで、NTCPをプロテオリポソームとして調製することに成功し、preS1結合活性を有することを確認した。 キャプシドとLHBsの相互作用による宿主の肝細胞内におけるウイルス再構築機構の解明に向けては、キャプシドとペプチドを問題なく調製できており、両者の相互作用解析や立体構造解析を行う準備が整っている。
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Strategy for Future Research Activity |
無細胞タンパク質合成系を用いて調製したNTCPリポソームとpreS1の相互作用の溶液NMR解析を行い、preS1上のNTCP結合残基、およびNTCP結合時のpreS1の立体構造を明らかにする。 キャプシドとの結合に重要なLHBs中の領域を溶液NMR法により特定し、複合体の構造をX線結晶構造解析またはクライオ電子顕微鏡法により解明する。
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Causes of Carryover |
<理由> 予定していた設備備品は購入が不要になったほか、サンプル調製法の再検討が必要となったことで立体構造解析に向けた大量調製を行わなかったため。 <使用計画> 研究計画の遂行には、今後、予定よりも多量の界面活性剤や脂質、無細胞タンパク質合成試薬などの消耗品が必要になるため、これらの消耗品を購入する予定である。
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Research Products
(6 results)