2021 Fiscal Year Research-status Report
Development of novel free energy change prediction method independent of entropy change
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18K06615
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
川下 理日人 近畿大学, 理工学部, 講師 (00423111)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 活性予測 / フラグメント分子軌道法 / 蛋白質間相互作用 / 分子動力学計算 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、フラグメント分子軌道法で得られるフラグメント間相互作用エネルギーと、エントロピー-エンタルピー補償側を利用することで、エントロピー変化を用いることなく阻害剤と蛋白質間の自由エネルギーを予測する手法の開発である。その前段階として、フラグメント分子軌道計算によるフラグメント間相互作用エネルギーとエンタルピー変化との間に高い相関関係を有する必要があることから、種々の阻害剤-蛋白質間の複合体系における阻害剤のエンタルピー変化とフラグメント間相互作用エネルギーとの間にどの程度の相関があるかを検証する必要がある。 これまで静的な結晶構造のみを対象に計算を行ってきたが、結晶構造への依存性が高く、構造によっては反発の大きいものもみられたことから、本年度は分子動力学計算を用いた動的構造を取得して計算することを試みた。対象として、AKR1B10阻害剤複合体、AKR1B1阻害剤複合体、AKR1C3阻害剤複合体、AKR1C2阻害剤複合体を用い、AKR1B10とAKR1C3の強力で選択性のある阻害剤の探索を目的に、スーパーコンピュータ「富岳」を用いてフラグメント分子軌道 (FMO) 法と分子動力学 (MD) シミュレーションを行った。 その結果、AKR1B10ではTrp21と阻害剤間のπ-π相互作用、Val48と阻害剤間のCH-π相互作用、Tyr49と阻害剤間のπ-π相互作用が選択性に関与していると示唆された。また、AKR1C3ではPhe306と阻害剤間のπ-π相互作用、Phe311と阻害剤間のπ-π相互作用が選択性に関与していると示唆された。これらの結果は、両タンパク質に対しての選択性の高い新規阻害剤を探索するために有用であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、アルデヒド還元酵素 (AKR) の1つであるAKR1B10およびAKR1C3に着目した。AKR1B10はAKR1B1と71%の相同性を持つことから、活性の強いものはAKR1B10に対する選択性が低く、選択性の高い阻害剤は阻害活性が低い。また、AKR1C3についてもAKR1C1, C2, C4と84%以上の高い相同性を持っており、交差阻害による副作用が起こる可能性がある。AKR1C3では、Ser118, Asn167, Phe306, Phe311, Tyr319からなるSP1領域と阻害剤が結合することで、より強力で選択的な抗がん剤が得られると期待されている。 本研究では、AKR1B10とAKR1C3の強力で選択性のある阻害剤の探索を目的に、スーパーコンピュータ「富岳」を用いて、AKR1B10阻害剤複合体、AKR1B1阻害剤複合体、AKR1C3阻害剤複合体、AKR1C2阻害剤複合体のフラグメント分子軌道 (FMO) 法と分子動力学 (MD) シミュレーションを行った。 その結果、AKR1B10ではTrp21と阻害剤間のπ-π相互作用、Val48と阻害剤間のCH-π相互作用、Tyr49と阻害剤間のπ-π相互作用が選択性に関与していると示唆された。さらに、His111と阻害剤間の水素結合も選択性に関与していると示唆された。そのため、Trp21, Val48, Tyr49の3残基との分散相互作用およびHis111との水素結合をするような構造を導入することで、選択性の高い新規阻害剤を作成できると考えられる。 AKR1C3ではPhe306と阻害剤間のπ-π相互作用、Phe311と阻害剤間のπ-π相互作用が選択性に関与していると示唆された。そのため、Phe306, Phe311と分散相互作用をするような芳香環などを導入することで選択性の高い新規阻害剤を開発できると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は前年度までの結果をまとめて論文化するほか、一部未完成の部分については論文化につながるよう計算を完了させる。 また、関連の研究成果について、学術集会等での発表を精力的に行い、研究を完結させる。
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Causes of Carryover |
本年度の経費は主として国際学会の旅費に使用する予定であったが、当該学会がオンライン開催となったため、大幅に使用金額が減少した。 そのため、当該経費の一部を本年度のソフトウェア代として使用し、残額は翌年度の国内学会およびデータ整理関係のアルバイト代として利用予定である。
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Research Products
(13 results)