2018 Fiscal Year Research-status Report
次世代医療に貢献する新規ゲル素材:カーボンナノコンポジットゲルの創製
Project/Area Number |
18K06618
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Research Institution | Sojo University |
Principal Investigator |
庵原 大輔 崇城大学, 薬学部, 准教授 (40454954)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | シクロデキストリン / グラフェン / 近赤外光応答性 / ナノコンポジットゲル |
Outline of Annual Research Achievements |
抗体などのバイオ医薬品の担体として、注射投与後に温度や pH などの外部刺激に応答してゲル化し、薬物を持続放出するインジェクタブルゲルの開発が期待されている。グラフェンは炭素原子が蜂の巣状に共有結合した単原子シートであり、近赤外光を効率的に熱に変換することが知られている。本研究では、疎水化ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HM-HPMC)ゲルとシクロデキストリン(CD)の相互作用の温度応答性およびグラフェンの近赤外光吸収性を利用した物理架橋型ナノコンポジットゲルの構築を企図して、親水性グラフェンナノ粒子の調製と近赤外光応答性の評価ならびにインジェクタブルゲルの構築と薬物持続放出性について検討した。以下に得られた知見を要約する。 1、生体適合性に優れる CDとグラフェンを混合粉砕し、水へ分散することで 150 nm のナノ粒子を調製した。このナノ粒子に近赤外光を照射すると、ナノ粒子化していないグラフェンよりも効率的に発熱した。 2、HM-HPMC と CD のホスト-ゲスト相互作用を利用して、体温付近でゲル化する温度応答性ヒドロゲルを調製した。この温度応答性ゲルに蛍光色素(ICG)を封入し、マウスに皮下投与すると、投与 24 時間後においても ICG の蛍光が観察され、薬物を持続的に放出することが示唆された。また、ヒトインスリンを封入した HM-HPMC/CD ヒドロゲルをラットに皮下投与すると、血漿インスリン濃度は高値を示し、血糖降下作用も有意に持続した。 3、HM-HPMC/CD ヒドロゲルにグラフェンナノ粒子を添加すると、近赤外光に応答して速やかにゲル化するインジェクタブルゲルを調製可能であった。 以上の結果より、グラフェンナノコンポジットゲルは近赤外光に応答して生体内で速やかにゲル化し、バイオ医薬品を持続放出する次世代型ヒドロゲルとして機能するものと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では HM-HPMC ゲルと CD の相互作用の温度応答性およびグラフェンの近赤外光吸収性を利用した物理架橋型ナノコンポジットゲルを調製し、近赤外光に応答して生体内で速やかにゲル化し、バイオ医薬品を持続放出する次世代型ヒドロゲルを構築する。これまでに、ナノコンポジットゲルの基剤となる生体適合性の温度応答性インジェクタブルゲルを調製し、タンパク質性薬物の持続放出担体として有用なことを明らかにした(論文投稿中)。また、極めて難水溶性のグラフェンを親水性ナノ粒子化し、優れた光-熱変換能を有することも明らかにした。近赤外光応答性グラフェンナノコンポジットインジェクタブルゲルの構築は順調に進行中である。
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Strategy for Future Research Activity |
近赤外光応答性グラフェンナノコンポジットインジェクタブルゲルの近赤外光照射による生体内でのゲル化ならびに生体内挙動を追跡する。さらに、ヒト IgG 抗体などをモデル薬物に用いて、ゲル中での凝集安定性および in vitro 放出性を検討し、ラットに皮下注射+近赤外光照射後の薬物持続放出効果を明らかにする。
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Research Products
(11 results)