2018 Fiscal Year Research-status Report
膵管癌細胞における一次繊毛消失の意義と分子メカニズムの解明
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18K06627
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
小林 哲夫 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 助教 (80433994)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 一次繊毛 / 膵管がん |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒト膵管がん由来であるPanc1細胞は、多くのがん細胞で消失している一次繊毛を低頻度ながら形成する。CRISPR/Cas9法により、一次繊毛形成に必要であることが知られているタンパク質Cep164またはIFT80に変異を導入した細胞株を樹立した。これらの細胞株の一次繊毛形成を調べたところ、Cep164変異株では著しく一次繊毛が減少し、IFT80変異株では一次繊毛が消失した。次に、これらの細胞株にCep164またはIFT80を異所的に発現させたところ、一次繊毛の形成が回復したことから、樹立した細胞株では変異を導入した遺伝子依存的に一次繊毛が減少、または消失することが確かめられた。これらの細胞株を用いてがん細胞の増殖能を調べるコロニー形成アッセイを行ったところ、Cep164変異Panc1細胞は野生型Panc1細胞と比較して、多くのコロニーを形成することが分かった。この傾向は、足場非依存的なコロニー形成を調べるソフトアガーコロニー形成アッセイにおいても観察された。さらに、野生型Panc1細胞に対して、一次繊毛を除去する薬剤である抱水クロラール(ClHy)を処理したところ、Cep164変異細胞と同様にコロニー形成能が高まることが分かった。また、実際にClHy処理によりPanc1細胞の一次繊毛は減少することが確認された。以上の結果は、一次繊毛の消失が膵管がん細胞の増殖に対して促進的に寄与することを示唆する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
一次繊毛を持たない膵管がん細胞株の樹立に成功し、その細胞株を用いた解析から一次繊毛と膵管がん細胞の増殖との関連が解明されつつあるため。
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Strategy for Future Research Activity |
膵管がん細胞の増殖と一次繊毛の関連を明らかにするため、以下の解析を計画している。 1. 野生型、及びCep164変異Panc1細胞株において、発現レベルが変動しているタンパク質、及び活性化レベルが変動しているシグナル経路の探索と同定を進める。 2. 野生型、及びCep164変異Panc1細胞株をマウスに異種移植し、in vivoでの腫瘍形成を評価する。
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Research Products
(5 results)