2018 Fiscal Year Research-status Report
プロトン輸送ATPaseを標的とした新規創薬アプローチ
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18K06629
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Research Institution | Iwate Medical University |
Principal Investigator |
關谷 瑞樹 岩手医科大学, 薬学部, 助教 (70509033)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | プロトン輸送ATPase / ポリフェノール / F-ATPase / S. mutans |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題では、病原性細菌のプロトン輸送 ATPase について駆動機構の解明と特異的な阻害化合物の探索を目的に研究を行った。S. mutans は、う蝕(虫歯)の原因菌の一つであり、同菌の除菌は虫歯の治療につながると考えられるが、薬物療法は一般的でない。S. mutans はプロトン輸送 ATPase としてF-ATPaseを有しており、今年度はS. mutansのF-ATPase のF1部分及び、F-ATPaseを発現した膜画分を調製し、触媒活性の評価と阻害化合物の探索を行った。S. mutansのF1 部分のATPase活性はE. coliの酵素に比べ低pHでも活性を維持しており、pH4.3でも触媒活性が確認できた。また、ピセタノールや、クルクミン、デメトキシクルクミンなどのポリフェノール類がF1や膜画分のATPase活性をpHに依らず強力に阻害することを明らかにした。S. mutansの増殖に対し、これらの化合物は、pH7.3の培地では抑制しなかったが、pH5.3では有意に抑制した。さらにピセタノール、クルクミン、デメトキシクルクミンはpH4.3でのS. mutansの生存率を大きく低下させた。これらの結果は、F-ATPaseがS. mutans の酸性環境における生存・増殖に重要な役割を果たしていることを示唆している。研究成果は Archives of Biochemistry and Biophysics 誌に発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
S. mutans におけるプロトン輸送ATPaseを精製し、その役割を明らかにした。また、阻害化合物をポリフェノールを中心に数種類見出した。これらの化合物は毒性も低いため、う蝕の予防などでの実用性も期待できる。研究は概ね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
S. mutans におけるF-ATPaseの機能をより詳細に明らかにするために、F-ATPaseの欠損株を作製し、表現型を検討する。また、化膿性疾患を引き起こす口腔内病原細菌の S. anginosusはプロトン輸送ATPaseとしてF-ATPaseとA-ATPaseの2種類を有する。それぞれの酵素を精製し、阻害する化合物の探索や、菌の生存・増殖における役割などを検討していく。
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Causes of Carryover |
(理由) 病原微生物のプロトン輸送ATPase遺伝子のクローニングを一部次年度の実施とした。このため、分子生物学用試薬と人件費の一部を次年度に充てることとした。 (使用計画) プロトン輸送ATPase遺伝子のクローニングのため、分子生物学用試薬と人件費に充てる。
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Research Products
(9 results)