2019 Fiscal Year Research-status Report
ROS感知機構BAG-1/ATF4システムはフェロトーシスの制御システムか?
Project/Area Number |
18K06630
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Research Institution | Tohoku Medical and Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
久下 周佐 東北医科薬科大学, 薬学部, 教授 (50186376)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | BAG-1 / ROS感知 / eIF2αキナーゼ / リン酸化eIF2α脱リン酸化酵素 |
Outline of Annual Research Achievements |
シスチンの細胞内への取り込みに寄与するシスチントランスポーター(xCT)の発現は、細胞内の還元型グルタチオンのレベルを維持しフェロトーシスの制御に必要である。これまでにxCTの発現制御にはP53およびATF4が必要であることが報告されている。一方、私たちの研究グループではBAG-1がROSを感知してeIF2αのリン酸化レベルを制御してATF4のレベルを制御することを見出してきた。そこで、本研究ではBAG-1がフェロトーシスへのROS感知に重要な因子であることを明らかにすることを目的とした。 P53を保持しないヒト肺腺癌細胞H1299のBAG-1を欠損したところ、増殖には強く影響しなかったが、eIF2αのリン酸化およびATF4の活性化レベルを構成的に増強した。また、酸化ストレス下では欠損変異によりeIF2αのリン酸化の誘導レベルおよび細胞増殖が低下した。 一方、P53の活性を保持するマウス胎児線維芽細胞(MEF)でBag-1の制御ドメインを欠失したmRNAを発現する細胞を取得し、この細胞のBag-1蛋白質を調べたところ検出限界以下であった。すなわちP53は発現しBag-1を発現していないMEFの細胞を取得することに成功した。この細胞の場合は、Bag-1の変異によりeIF2αの構成的なリン酸化レベルが低下し、細胞内の還元状態を維持するために必要なグルタチオン合成系を抑制する薬剤で処理した場合に感受性を示した。以上の結果は、BAG-1がeIF2αのリン酸化レベルに影響を与えて、酸化ストレス抵抗性に寄与することを初めて明確に示したものである。また、P53もeIF2αの構成的なリン酸化レベルに寄与することを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
遺伝子のノックアウトと置き換えによる実験系が稼働して遺伝学的に明確なデータの取得につながっており、BAG-1の制御が酸化ストレスの抵抗性に寄与していることが明らかになった。得られた細胞を用いて、BAG-1のフェロトーシスへの明確な寄与を、阻害剤や遺伝学的な手法を用いた研究につなげることができる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに得られた細胞を用いて、BAG-1のフェロトーシスへの明確な寄与を、xCTの阻害剤を用いた研究につなげる。 1.eIF2αの脱リン酸化制御は複数の因子が複雑に絡んでいることが明らかになてきたことから、酸化ストレス応答におけるBAG-1による脱リン酸化制御とそれらの因子との機能連関を解明する必要がある。これらの因子とBAG-1の関係を明らかにすることで包括的な理解につなげる。 2.BAG-1のシステイン残基変異体発現細胞を取得しつつあり、この細胞を用いてBAG-1による酸化ストレスの感知とフェロトーシスへの寄与を明らかにする。 3.P53の有無がeIF2αのリン酸化レベルそのものに与える影響がxCTを阻害する実験を用いてxCTの発現レベルに依存するのかを明らかにする。
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Causes of Carryover |
高額な試薬(抗体など)の購入、学会発表が最終年度に後ろ倒しされた。また、成果報告のための経費に充当する予定であるため。
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