2018 Fiscal Year Research-status Report
ヒト免疫不全ウィルスの膜融合に関わるSMS2のヘテロオリゴマー解析
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18K06635
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
林 康広 帝京大学, 薬学部, 助教 (70582857)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | スフィンゴミエリン合成酵素 / ヘテロ複合体 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は、SM合成酵素2 (SMS2) がヒト免疫不全ウイルスのエンベロープタンパク質を介した膜融合を促進することを明らかにした。その解析の過程で、SMS2のアイソフォームタンパク質であるSMS1とグルコシルセラミド合成酵素(GCS) が近接することを見い出した。二つのタンパク質はゴルジ体で実質的には異なる分布を示すが部分的に共局在することが知られている。しかしながら、ゴルジ体で共局在するSMS1とGCSの役割については不明な点が多い。そこで、SMS1とGCSのヘテロ複合体の機能を明らかにすることを目的として以下の実験を行った。 免疫共沈の結果、GCSはSMS2よりもSMS1と親和性が高いことがわかった。次に、蛍光タンパク質再構成法を用いて、SMS1とGCSのアミノ末端の近接を調べた。その結果、SMS1-GCSヘテロ複合体において、SMS1のN末端とGCSのC末端は最も近接することがわかった。N、C末端の配向を調べると、SMS1のN、C末端はゴルジ体において細胞質に配向するが、GCSはN末端がゴルジ体のルーメン側、C末端が細胞質側に配向することがわかり、蛍光タンパク再構成法の結果と矛盾しなかった。 次に、SMS1とGCSのヘテロ複合体の形成が、SM合成に与える影響を調べた。FKBP(FK506-binding protein)-SMS1キメラタンパク質とFRB(FKBP-rapamycin binding protein)-GCSキメラタンパク質を発現する細胞に対し、ラパマイシン処理でヘテロ複合体の形成を誘導すると、ラパマイシン未処理と比べて、SM合成速度が約30%増加した。以上の結果から、SMS1-GCS複合体はSM合成を正に制御することが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年度は、SMS1とGCSのヘテロ複合体における近傍領域を蛍光タンパク質再構成法により解析することが目標であり、当初の計画以上に進展した。具体的には、SMS1 の N 末端と GCS の C 末端が近傍にあることを明らかにした。さらに当初2019年度に行う予定であった、ラパマイシンを用いた蛋白質複合体を誘導実験によって、SMS1-GCSヘテロ複合体が SM の産生を正に制御することを見出した。上記進捗状況と、2018年度の業績(原著論文の筆頭著者として1報)を総合し、「概ね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はSM合成酵素の近傍タンパク質をビオチンリガーゼ法を用いて網羅的に解析する。現在、SM合成酵素のN末端あるいはC末端にグリシンリンカー (GGGGS)3 を介してビオチン化タンパク質 Turboが融合したキメラタンパク質の発現ベクターを構築し、ヒト由来のHEK293T細胞を用いて、キメラタンパク質を安定発現する細胞を樹立している。共焦点顕微鏡で細胞内局在を調べたところ、全てのキメラタンパク質が野生型と同様の局在を示した。細胞をビオチン含有培地で培養し、ビオチン化タンパク質をストレプトアビジンビーズで回収し、溶出タンパク質を銀染色およびウエスタンブロットで検出した。引き続き、ビオチン化タンパク質の同定を行い、SM合成酵素の近傍タンパク質を同定していく。
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Research Products
(3 results)
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[Journal Article] Complex formation of sphingomyelin synthase 1 with glucosylceramide synthase increases sphingomyelin and decreases glucosylceramide levels2018
Author(s)
Yasuhiro Hayashi , Yoko Nemoto-Sasaki, Naoki Matsumoto, Kotaro Hama, Takashi Tanikawa, Saori Oka, Tadaaki Saeki, Tatsuya Kumasaka, Takanori Koizumi, Seisuke Arai, Ikuo Wada, Kazuaki Yokoyama, Takayuki Sugiura, and Atsushi Yamashita
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Journal Title
Journal of Biological Chemistry
Volume: 293
Pages: 17505-17522
DOI
Peer Reviewed
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