2019 Fiscal Year Research-status Report
Studies on of mechanism of hypomanganemia caused by the mutation of zinc transporter ZIP8
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18K06646
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Research Institution | Tokushima Bunri University |
Principal Investigator |
藤代 瞳 徳島文理大学, 薬学部, 講師 (10389182)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | マンガン / 輸送 / 変異 / 亜鉛輸送体 |
Outline of Annual Research Achievements |
亜鉛(Zn)輸送体のZIP8はマンガン(Mn)を細胞内に輸送する。低Mn血症の患者においてZIP8の遺伝子変異が報告され、Mn欠乏により全身症状を呈した。この症状を示す患者がもつ単一変異ZIP8(Val33MetとSer335Thr、Gly38ArgとIle340Asn)を発現する細胞を作製し、Mn及びCdの輸送への影響を検討した。DT40細胞(ニワトリB細胞由来細胞)のZIP8を欠損した⊿ZIP8 DT40細胞にヒトZIP8の野生型および患者と同じ単一hZIP8変異遺伝子導入し安定に発現している細胞を作製した。 ⊿ZIP8 DT40細胞にhZIP8 WT及び4種類の変異体: (Val33Met), (Gly38Arg), (Ser335Thr), (Ile340Asn)を安定的に高発現した細胞株の樹立し、Mnの細胞内取込み効率を検討したところ、野生株hZIP8 WT 発現細胞では⊿ZIP8細胞よりMnの取り込みが著しく増加した。しかし、(Ser335Thr), (Ile340Asn) 発現細胞におけるMnの取込みは⊿ZIP8細胞と同じレベルであった。一方、(Val33Met), (Gly38Arg)発現細胞はZIP8 WT発現細胞より高いMn取り込み効率を示した。また、Cd取り込み効率も同様の結果を示した。 細菌のZIP4のZIP4の3次元構造に基づいてZIP8のTMD構造のトポロジカルモデルを予測した結果、Val33およびGly38はN末端細胞外ドメインに、Ser335およびIle340はTMD5に位置することが予測された。ZIP4においてTMD4およびTMD5はZnの輸送に重要であることが報告されており、ZIP8のTMD5に位置することが予測される場所の変異 (Ser335, IIe340)がMnの輸送能に重要な役割を果たすことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度はHEK293細胞を用いて、単一変異ZIP8安定発現株を作製し、Mn輸送の変化を解析した。しかし、ZIP輸送体は細胞膜上に安定発現することが難しく、野生型hZIP8を高発現しても、MnやCdの取り込み効率がベクター発現細胞に比べて上昇するが差があまり大きくないという問題があった。そこで遺伝子の変異体安定発現が容易なDT40細胞を使用した。DT40細胞にもともと発現しているZIP8を欠失した細胞にヒトZIP8およびその変異遺伝子を導入したことから、野生型hZIP8を高発現したDT40細胞では、MnやCdの取り込み量が高くなり、変化が解析しやすくなった。また、ZIP8の変異によるMn取り込み効率への影響はHEK293細胞で見られた変化と一致していることが分かった。 このように、ZIP8の変異によるMn輸送および動態への影響を解析する上では、DT40細胞を使用したほうがよいことが分かった。 一方、腎臓近位尿細管においてZIP8を介したMn再吸収が全身でのMn濃度の調節に関与している可能性について明らかにするため、腎臓の近位尿細管におけるMn取り込みにZIP8が関与しているかを検討している。Mnの取り込み効率が高い近位尿細管のS3領域由来不死化細胞(S3細胞)を用いて、様々な条件でZIP8の発現抑制を試みているが、現在のところ上手くいっていない。今後さらに条件検討していく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
全身性のMn代謝異常を示す患者が持つ単一変異ZIP8を安定発現する細胞の樹立に成功し、ヒトZIP8のTMD5に位置することがよそくされる(Ser335), (Ile340) は、細胞内へのMnの取込みに重要であることを見いだした。Cdについては同様の結果が得られているが本来ZIP8はZnの輸送体である。今後Znの取り込み効率への影響を解析したい。 また、臨床報告に加えて近年、GWASプロジェクトにより、様々な疾患や症状とZIP8の一塩基多型(SNP)との関連が報告され注目されている。このSNPと同じアミノ酸の単一変異ZIP8を発現する細胞を作製し、Mn及びCdの輸送への影響を検討を目指したい。 ZIP8変異による全身のMn欠乏の原因として、ZIP8は胆汁中に排泄されたMnの再吸収に関わっている可能性と、腎臓の原尿中に排泄されたMnの再吸収に関わっている可能性の2つが現在考えられる。しかし、ZIP8変異によるMn代謝異常症発症のメカニズムはまだ詳細には明らかになっていない。今後、ZIP8によるMn恒常性の調節機構の解明に繋げられるような展開を行っていきたい。
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Research Products
(10 results)