2019 Fiscal Year Research-status Report
新奇生理活性脂質「グルコース化脂質」の解析プローブの開発と脂質機能解析への応用
Project/Area Number |
18K06648
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
長谷川 顕子 (山路顕子) 国立研究開発法人理化学研究所, 脳神経科学研究センター, 専任研究員 (20332314)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 脂質解析プローブ / 生体膜 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年のリピドミクス解析の進展により、一群のグルコース化脂質の存在が明らかとなった。グルコース化脂質は、神経変性疾患・加齢性疾患・生活習慣病などへの関与が指摘されており、その代謝機構や生理機能への関心が高まっている。しかし、生体内でグルコース化脂質は極微量成分であり、効率的で汎用性のある解析手段に乏しいため、その代謝機構・動態・分子間相互作用などは未だ解明されていない。本研究では、まずグルコース化脂質のダイナミクス研究に有用な解析プローブを開発し、さらにそれを用いて、様々な細胞におけるグルコース化脂質の分布・細胞内動態・共局在分子の解析等を行う。これにより、この新奇生理活性脂質の生理機能や疾患との相関の分子機構の解明を目指す。 昨年度までに、いくつかのスクリーニングにより、脂質結合活性を持つ複数の蛋白質を見出した。今年度は、脂質の骨格構造・親水性頭部構造・脂肪酸鎖長など、詳細な脂質特異性を検討し、ある一つの蛋白質が、グルコース化脂質とは異なる脂質分子種に特異的に結合することを明らかにした。また、この蛋白質の部分欠損変異体を用いた解析により、蛋白質の脂質結合領域を同定した。 得られた脂質-蛋白質間相互作用の情報をもとに、タグ付加リコンビナント蛋白質や蛍光標識蛋白質などを作製し、細胞染色実験などにより、標的脂質の細胞内分布や分子間相互作用の解析などを進めている。また、この蛋白質を哺乳動物細胞内で発現させるためのプラスミドを作製し、標的脂質の細胞内動態や細胞機能への寄与の解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目的であるグルコース化脂質に対する結合蛋白質の代わりに、別の脂質分子種に対する特異的結合蛋白質が同定できており、その結合様式について詳細な解析を行うことができた。また、その結果に基づいて、標的脂質の動態および機能解析にも着手できている。
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Strategy for Future Research Activity |
同定した脂質結合蛋白質の蛍光標識物を用いて、各種細胞の様々な状態における標的脂質の発現や分布を明らかにする。また、当該蛋白質を細胞内に発現させて、標的脂質の動態や共局在分子の解析を行う。さらに、当該蛋白質の発現に伴う細胞機能の変化を探索する。
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Causes of Carryover |
今年度は昨年度に引き続き、主に生化学実験や分子生物学実験を行ったので、試薬等の新規購入が予定よりも少なく、次年度使用額が発生した。翌年度には、細胞生物学的解析を行うため、細胞培養に関連する試薬・器具等や、抗体・蛍光物質などの試薬類、顕微鏡観察に関連する試薬・器具類を新たに購入する。
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