2018 Fiscal Year Research-status Report
TTR単量体の変性、凝集体形成の分子機構の解明と遺伝性難病FAPの創薬への応用
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18K06659
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
佐藤 卓史 熊本大学, 大学院生命科学研究部(薬), 助教 (70555755)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森岡 弘志 熊本大学, 大学院生命科学研究部(薬), 教授 (20230097)
小橋川 敬博 熊本大学, 大学院生命科学研究部(薬), 准教授 (90455600)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | トランスサイレチン |
Outline of Annual Research Achievements |
家族性アミロイドポリニューロパチー(FAP)の原因タンパク質であるトランスサイレチン(TTR)は四量体から単量体への解離、単量体の変性・凝集体形成を経てアミロイドを形成する。アミロイド形成実験に汎用される酸変性条件ではTTR単量体の変性・凝集体形成過程の解析が困難であるため詳細な機構はこれまで不明であった。本研究では、TTR単量体の変性・凝集体形成を標的とした創薬研究を展開するために「変性により単量体の立体構造がどのように変化し、変性した単量体がどのような会合様式で細胞毒性を示す凝集体を形成するのか」という問いを独自の手法を用いて解明することを目的とした。予備検討により見出していたTTR単量体の3つの構造状態について変異導入実験およびケミカルバイオロジー的手法を用いた解析を行い、TTR単量体の各状態間には動的平衡が存在しており、それぞれの構造状態は熱力学的安定性が異なることがわかった。また、核磁気共鳴分光法による解析からTTR単量体の構造動態の形成に関わるアミノ酸残基の同定に成功した。さらに、予備検討により見出していたTTR単量体の変性に伴い生成するジスルフィド結合を介した二量体(S-S結合二量体)について生化学的解析を行い、アミロイド形成過程においてS-S結合二量体が形成され、その形成効率は変性条件により変動することがわかった。また、S-S結合二量体の立体構造を核磁気共鳴分光法により決定するためにS-S結合二量体の調製法の確立を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度計画した研究内容を概ね実施することができ、TTR単量体の構造動態に関する有用な知見を得ることができた。また、次年度に行う核磁気共鳴分光法のための試料調製法も本年度中に構築できており、次年度はスムーズに研究を進展させることができる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度はTTR単量体の凝集体形成機構に焦点を当て、以下の2点を中心に研究を行う。 (1)アミノ酸選択的安定同位体標識したS-S結合二量体を調製して核磁気共鳴分光法によりS-S結合二量体の立体構造を明らかにする。 (2)S-S結合二量体が会合した可溶性凝集体の性状を高速原子間力顕微鏡または透過電子顕微鏡を用いて解析し、神経細胞株に対する凝集体の細胞毒性作用を明らかにする。
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Causes of Carryover |
本年度は繰越額が生じたが実験は概ね良好に進んでおり問題はなかった。繰越額は次年度に計画している核磁気共鳴法による構造解析のためのアミノ酸選択的標識に使用する安定同位体試薬に充当する。
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Research Products
(6 results)