2019 Fiscal Year Research-status Report
TTR単量体の変性、凝集体形成の分子機構の解明と遺伝性難病FAPの創薬への応用
Project/Area Number |
18K06659
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
佐藤 卓史 熊本大学, 大学院生命科学研究部(薬), 助教 (70555755)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森岡 弘志 熊本大学, 大学院生命科学研究部(薬), 教授 (20230097)
小橋川 敬博 熊本大学, 大学院生命科学研究部(薬), 准教授 (90455600)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | トランスサイレチン / アミロイドーシス |
Outline of Annual Research Achievements |
家族性アミロイドポリニューロパチー(FAP)の原因タンパク質であるトランスサイレチン(TTR)は四量体から単量体への解離、単量体の変性・凝集体形成を経てアミロイドを形成する。アミロイド形成実験に汎用される酸変性条件ではTTR単量体の変性・凝集体形成過程の解析が困難であるため詳細な機構はこれまで不明であった。本研究では、TTR単量体の変性・凝集体形成を標的とした創薬研究を展開するために「変性により単量体の立体構造がどのように変化し、変性した単量体がどのような会合様式で細胞毒性を示す凝集体を形成するのか」という問いを独自の手法を用いて解明することを目的とした。本年度は、TTR単量体の変性に伴い生成するジスルフィド結合を介した二量体(S-S結合二量体)の機能解析、S-S結合二量体由来の凝集体の性状解析および神経細胞に対する毒性評価を行った。S-S結合二量体の生成は溶液中のレドックス環境により制御されることを明らかにした。また、S-S結合二量体はプリオン様活性を有しており、ネイティブ状態の単量体とジスルフィド結合の架け替え反応を起こすことでS-S結合二量体を複製・増幅して、凝集体形成を促進することを見出した。透過型電子顕微鏡を用いた解析より、S-S結合二量体由来の凝集体は未成熟な線維構造を有しており、native状態の単量体と異なる二次構造を示すことが分かった。さらに、S-S結合二量体由来の凝集体は神経細胞に対して細胞毒性を示すことも明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究が順調に進行したおかげで、本年度実施する研究に加えて、来年度行う予定の一部の研究(細胞毒性評価)を先行して行うことができ、S-S結合二量体の機能および構造特性に関する新規の知見を得ることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度はS-S結合二量体およびその凝集体の構造に焦点を当て、以下の2点を中心に研究を行う。 (1)S-S結合二量体形成に伴う単量体の構造変化を核磁気共鳴分光法により解析して、S-S結合二量体の立体構造を明らかにする。 (2)S-S結合二量体由来の凝集体形成過程の構造を高速原子間力顕微鏡により解析する。
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Causes of Carryover |
本年度の繰越額は微小であり次年度の使用計画に充当する。 繰越額は次年度に計画している核磁気共鳴法による構造解析および高速原子間力顕微鏡解析のためのタンパク質試料調製の消耗品類の物品費に充当する。
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