2019 Fiscal Year Research-status Report
上皮間葉転換を制御する新規脱ユビキチン化酵素の同定とがん治療への応用
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18K06660
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
井上 靖道 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(薬学), 准教授 (10450579)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 脱ユビキチン化酵素 / 上皮間葉転換 / 浸潤・転移 / がん幹細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
上皮間葉転換(EMT)は、がんの浸潤・転移をはじめとしたがんの悪性化に深く関与している。したがって、EMTの制御機構を明らかにすることは、新たながん治療法を開発する上で極めて重要である。申請者らはEMTの誘導に関わる転写因子Snailタンパクの安定性を制御する新規脱ユビキチン化酵素(DUB)を同定し、そのDUBががんの浸潤・転移に関与することを見出した。これらの研究成果から、EMTを制御する脱ユビキチン化酵素を同定することで、同酵素の阻害による新たながんの分子標的薬の開発につながると考えた。そこで本研究では、申請者らがすでに研究を進めているSnailに加えて、一連のEMT関連転写因子に対するDUBを同定し、EMT誘導における分子メカニズムを明らかにすることを目的とした。 今年度の研究で以下の結果を得た。 (1) EMTを制御するヒストンメチルトランスフェラーゼSET8に対するDUBとしてUSP17が、SET8タンパクの安定化を介してCDKインヒビターp21の発現を抑制することを明らかにした。また、細胞老化に伴いUSP17の発現レベルが低下し、USP17の発現が減少することが、細胞老化を誘導することを明らかにした。これらの知見は論文に掲載された。(2) DUBを阻害する低分子化合物をスクリーニング可能な実験系の構築を完了した。(3) USP17が脂質代謝に関与する転写因子SREBPに対するDUBとして作用しEMTの制御に関与する可能性を見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の目標として、(1)Twistタンパクを制御するDUBの同定、(2)DUBを阻害する低分子化合物によるEMT制御の解析を予定していた。(1)については現在論文にまとめているところである。(2)については、ハイスループットスクリーニング可能な実験系の構築を完了した。また、USP17によるSET8タンパク安定化の制御に関しては論文として掲載された。Snail、Twist以外にEMTを制御するSREBPのDUBを新たに同定し、その作用メカニズムを解析するなど、全体としてはおおむね順調に進捗していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は最終年度であり、Snailタンパクの脱ユビキチン化制御とTwistタンパクの脱ユビキチン化制御については、論文にまとめて投稿する予定である。また、DUBを阻害する低分子化合物によるEMT制御の解析を引き続き実施する。
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Research Products
(10 results)