2019 Fiscal Year Research-status Report
微生物由来Mer輸送体の有害金属及び希少金属輸送活性の環境浄化への展開
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18K06664
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
大城 有香 北里大学, 薬学部, 助教 (60550035)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 水銀耐性遺伝子 / ファイトレメディエーション / 金属輸送活性 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、世界の経済活動が進化する一方で、一部地域では金属による低濃度広範囲な土壌汚染が問題となっている。金属汚染土壌の中には産業需要の高い貴金属やレアメタルも存在しているため、汚染土壌からの安全で効果的な金属除去方法と、金属回収技術の開発が求められている。汚染土壌の安全な浄化技術として注目されるファイトレメディエーションは経済的で環境に優しい一方、浄化効率が悪いため効率を向上させる因子が必要である。研究代表者はこれまでに水銀トランスポーターとして見出されたMerC, MerE, MerF, MerT及びMerPが水銀化合物のみならず、カドミウム、亜ヒ酸及びクロム酸などを取り込むことを明らかにしてきた。このトランスポーターを浄化技術へ応用することで、本研究では有害金属だけではなく、レアメタルを含む金属輸送活性について明らかにすると共に、金属複合汚染の浄化および回収への利用性を明らかにすることを目的とした。平成31年度(令和元年度)は、MerC, MerE, MerF または MerT 組換え大腸菌株の亜鉛、マンガン、モリブデン取り込み活性について検討したところ、各Merトランスポーター組換え株の各金属濃度はコントロール株とほぼ同等であった。すなわち、Merトランスポーターは亜鉛、マンガン、モリブデン取り込み活性を持たないと考えられた。一方、Merトランスポーターの金取り込みについて検討した結果、MerPを共発現させたMerT組換え株はコントロール株に比べ有意に高いAu濃度を示した。このことから、MerP共存下でMerTは金取り込み活性を有することが明らかとなった。 水銀トランスポーターが有害金属だけでなく、貴金属である金を輸送することが見出され、Merトランスポーターが多様な金属輸送活性を持つことが今回初めて明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、MerC, MerE, MerF, およびMerTの金属取り込み活性及び金属複合存在下における取り込み活性について、金(Au)の他に、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、ガリウム(Ga)、アンチモン(Sb)について活性評価を順次開始している。また、Mer多重発現大腸菌の作製も進行しており、概ね順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度はMer輸送体多重発現大腸菌を作製し、水銀、カドミウム、ヒ素、銅、金などの取り込み活性を評価する。有望な Mer 輸送体を多重発現させることで相加的あるいは相乗的に輸送効率が向上するか検証し、最も効果的に金属を取り込むことができるMer輸送体の組合せを明らかにする。また、これまでの研究成果を科学論文に投稿する作業を行う予定である。
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Causes of Carryover |
今年度も順調に実験成果が得られ、必要な器具や消耗品が経費削減できた。最終年度に繰越した費用で本研究をさらに推進していく予定である。 薬類(培地、制限酵素等、金属測定用の各種金属標準液)、消耗品(ガラス器具、シャーレ、チューブ、チップ等)を主に購入する予定である。また、英語論文校閲・論文投稿の 費用として使用する予定である。
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Research Products
(5 results)