2018 Fiscal Year Research-status Report
Thyroid hormone-mediated actin dynamics regulate the reopening of the sensitive period of filial imprinting in chicks
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18K06667
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
山口 真二 帝京大学, 薬学部, 教授 (60398740)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 刷り込み / 甲状腺ホルモン / アクチン / コフィリン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、刷り込み学習の臨界期を開く甲状腺ホルモン(T3)に注目して、学習臨界期の分子基盤を解明することである。鳥類ヒナに見られる刷り込み学習は、生後の限られた時期にしか習得できないことから、臨界期を伴った学習の典型例と言える。これまでに、ヒナが刷り込み学習を行うと、T3が脳内に急速流入し臨界期が開始されること、臨界期終了後でもT3を一過的に投与すると閉じた臨界期が再び開き、刷り込みが可能となることを明らかにした。本研究では、T3がどのようなメカニズムで学習臨界期を開くのか、という問題を解明する。 本年度は、まず、Rho-Rock経路の主要なアクチン脱重合因子コフィリンに注目した。これまでに、代表者はRhoGTPaseファミリー蛋白質の一つであるRhoキナーゼの活性阻害剤が、T3と同様に臨界期を再び開く活性を有することを見出している。刷り込みに必要な脳領域にアデノ随伴ウイルスベクターをもちいて野生型とconstitutive active型を、強制発現させた。その結果、T3を投与しなくてもアクチン脱重合がトレーニングによる重合と拮抗的に起こり、刷り込みトレーニングにより進むアクチン重合と拮抗的におこり、ヒナの記憶が形成される臨界期が開くことが明らかとなった。コフィリンを介したアクチン脱重合が刷り込みの記憶獲得に重要であることが分かった。 さらに、T3 の下流でどのような神経伝達物質が働くかは明らかとするために抑制性の神経伝達物質 GABA に着目した。その結果、刻印付けの成否は GABA-A 受容体と GABA-B 受容体の量的バランスによって決定されると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに、代表者はRhoGTPaseファミリー蛋白質の一つであるRhoキナーゼの活性阻害剤が、T3と同様に臨界期を再び開く活性を有することを見出している。Rho-Rock経路の主要なアクチン脱重合因子コフィリンに注目した。コフィリンは、リン酸化によりアクチン脱重合活性が抑制されるが、コフィリンの3番目のアミノ酸セリンをアラニンに置換すると(S3A変異体)、リン酸化されなくなり、脱重合活性が常に活性化される。本年度は、アデノ随伴ウイルスベクターより、S3A変異体コフィリンを刷り込みに必要な脳領域に強制発現させることに成功した。そして、T3を投与しなくても臨界期が開くかどうか検討することができたのでおおむね順調に進んでいる。来年度以降、in vivo イメージングによりアクチン脱重合と刷り込みの記憶獲得の関係を解析することを進めていく。
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Strategy for Future Research Activity |
Rhoファミリー情報伝達経路に関わる様々な阻害剤を臨界期が閉じたヒナ大脳に注入して臨界期を開く活性を持つかどうか検討し、情報伝達経路を明らかにする。 また、Rhoキナーゼの活性阻害剤が臨界期を開く活性を持つことから、この過程では、神経微細構造が変化しているものと考えられる。代表者らは、これまでに遺伝子導入によりGFP(Green Fluorescent Protein)を神経細胞に発現させ、2光子励起レーザ走査型顕微鏡を用い、個体(ヒナ)を生かしたまま大脳の神経微細構造を可視化することに成功した。このin vivo イメージングを用いて、T3やRhoキナーゼ阻害剤の一過的な脳内投与により、刷り込み学習トレーニングと連動して、神経微細構造の量的変動と形態変化がどの程度おこるかを統計的に解析する。さらに、代表者らは、神経細胞棘突起でのアクチン重合を可視化するため、重合アクチンと結合するLifeAct(17アミノ酸のペプチド)とGFP(Green Fluorescent Protein)のfusionタンパク(LifeAct-GFP)を、神経細胞棘突起に発現させ、T3投与、刷り込み学習トレーニングに伴う、アクチン細胞骨格のダイナミクスの変化をin vivo イメージングにて解析する。
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Causes of Carryover |
本年度作成予定であった、リン酸化コフィリンを認識するペプチド抗体の作成を来年度に回したことにより当該助成金が生じた。来年度には、ペプチド抗体を作成する予定で、生じた当該助成金は使用予定である。
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Research Products
(8 results)