2018 Fiscal Year Research-status Report
Re-sensitization of drug-resistant cancer cells by targeting hexosamine signaling pathways
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18K06671
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
板野 直樹 京都産業大学, 総合生命科学部, 教授 (40257712)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ヘキソサミンシグナル / がん幹細胞 / 薬剤耐性 |
Outline of Annual Research Achievements |
がん幹細胞は、化学療法や放射線治療に抵抗性を示し、治療後も残存してがん細胞を生み続けて再発を引き起こすとされ、がんの根治を阻む元凶と考えられている。なかでも、多剤耐性を示すがん幹細胞集団の出現は、化学療法が奏功しない最大の要因になっている。がん幹細胞はその高い可塑性により、様々な環境に適応できる不均一な細胞を生み出し、それらが集団をなして薬剤耐性を拡げていると考えられる。代表者らはこれまでに、糖代謝中心プログラムのヘキソサミン合成経路 (HBP)が、薬剤耐性がん幹細胞の出現に深く関わっているとの新知見を得ている。そこで本年度は、ヘキソサミン代謝シグナルががん幹細胞可塑性を高めて薬剤耐性を拡げる機構の解明を目的に、研究に取り組んだ。 先ず、乳癌発症モデルマウスより樹立した乳がん幹細胞を用いて、HBP代謝流束を加速あるいは低下させ、がん幹細胞の薬剤耐性スペクトルの変化を解析した。具体的には、ヒアルロン酸過剰産生乳がん幹細胞において、既存の阻害剤やRNA干渉法によりGFATの活性や遺伝子発現を抑制して、HBP代謝流束を低下させた。逆に、対照乳がん幹細胞にGFAT遺伝子を過剰発現して、HBP代謝流束を促進した。このようにHBP代謝流束を変化させたがん幹細胞の培養に、各種抗がん剤を種々の濃度で添加し、一定時間あたりのがん幹細胞のアポトーシスの割合を測定した。その結果、HBP代謝流束と相関してシスプラチンに対する耐性が変化することを明らかにした。 今後、ヘキソサミン代謝シグナルが薬剤耐性を拡大する機構の更なる解明を通じて、がん幹細胞集団を標準化学療法で治療可能な細胞集団へと集約することは、現行治療を補完する多角的ながん治療にとって大きな意義がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究項目のうち「HBPと薬剤耐性スペクトルとの関係性解明」については、ヒアルロン酸過剰産生乳がん幹細胞においてHBP代謝流束を低下させ、逆に、対照乳がん幹細胞のHBP代謝流束を促進した細胞を樹立し、抗がん剤に対する耐性スペクトルを検討した。また、研究項目のうち「タンパク質O-GlcNAc修飾と薬剤耐性スペクトルとの関係性解明」については、ヒアルロン酸高産生がん幹細胞においてO-GlcNAc修飾酵素の酵素活性を阻害してタンパク質O-GlcNAc修飾を抑制し、あるいは、O-GlcNAc脱離酵素の酵素活性を阻害して過剰なO-GlcNAc修飾を誘導して、シスプラチンに対する反応性を解析する実験を開始した。当初、各種抗がん剤に対する反応性を解析する計画であったが、他の抗がん剤については次年度以降に引き続いて解析するよう計画を変更した。 上述のように平成30年度に計画していた研究については、計画に従って実験を進め、概ね当初の目標を達成した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は概ね順調に研究が進行したことから、次年度以降についても、当初計画通りに効率的な計画の実施に努める。平成31年度は、前年度の研究課題を継続して実施するとともに、計画変更となった項目や当初計画にある「多色細胞系譜追跡法によるがん幹細胞可塑性の検討」についても並行して実験を実施し、研究の完遂を目指す。
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Causes of Carryover |
研究計画のうち一部の計画を除き、計画に従って実験を実施した。しかし、研究開始時に研究補助員の採用が不調に終わったことを受け、研究項目のうち「タンパク質O-GlcNAc修飾と薬剤耐性スペクトルとの関係性解明」については、、研究開始時における計画の一部に若干の変更が生じている。研究開始時の実験補助員の採用がずれ込んだことにより、執行を予定していた実験補助員に係る人件費および消耗品費の一部が未使用となった。以上の理由により、次年度使用額が発生している。 計画変更となった研究については、実験補助員の勤務時間を見直して対応する。また、実験計画の見直しに伴って必要となる生化学実験や分子生物学実験、細胞培養のための消耗品については、物品費を計上して対応する。
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