2019 Fiscal Year Research-status Report
ヘキソサミンシグナル伝達経路を標的とした薬剤耐性スペクトルの狭小化とがん創薬
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18K06671
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
板野 直樹 京都産業大学, 生命科学部, 教授 (40257712)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ヘキソサミンシグナル / がん幹細胞 / 薬剤耐性 |
Outline of Annual Research Achievements |
がん幹細胞は、化学療法や放射線治療に抵抗性を示し、治療後も残存してがん細胞を生み続けて再発を引き起こすとされ、がんの根治を阻む元凶と考えられている。なかでも、多剤耐性を示すがん幹細胞集団の出現は、化学療法が奏功しない最大の要因になっている。がん幹細胞はその高い可塑性により、様々な環境に適応できる不均一な細胞を生み出し、それらが集団をなして薬剤耐性を拡げていると考えられる。代表者らはこれまでに、糖代謝中心プログラムのヘキソサミン合成経路 (HBP)が、薬剤耐性がん幹細胞の出現に深く関わっているとの新知見を得ている。本年度は、HBPの下流で働くヒアルロン酸糖鎖シグナルとO-GlcNAc修飾が、がん幹細胞の薬剤耐性を促進する機構の解明を目的に、研究に取り組んだ。 まず、進行性乳がんモデルマウスの乳がんより樹立したがん細胞を用いて、ヒアルロン酸糖鎖シグナルを遺伝子改変技術により抑制した。その結果、抗がん剤シスプラチンによるがん細胞の細胞死が上昇し、抗がん剤抵抗性が減弱することを明らかにした。タンパク質のO-GlcNAc修飾について解析したところ、O-GlcNAc修飾が進行性乳がん細胞で上昇していることが明らかとなった。さらに、O-GlcNAc転移酵素の阻害剤によるO-GlcNAc修飾の阻害が、がん幹細胞性を抑制し、この効果が、ヒアルロン酸糖鎖シグナルの抑制によりさらに増強されることを見出した。一方、阻害剤によるO-GlcNAc修飾の抑制が、ヒアルロン酸糖鎖シグナルの抑制により低下したシスプラチン抵抗性を再度上昇させることを明らかにした。以上の結果は、HBP代謝と連動したヒアルロン酸糖鎖シグナルとO-GlcNAc修飾が、がん幹細胞性の制御において相互補完的に機能しており、両者のバランスが、がん幹細胞の抗がん剤耐性獲得に重要であることを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究項目のうち「ヘキソサミン合成経路(HBP)と薬剤耐性スペクトルとの関係性解明」については、進行性乳がんモデルマウスの乳がんより樹立したがん細胞を用いて、HBP下流シグナルのヒアルロン酸糖鎖シグナルを抑制し、抗がん剤に対する耐性スペクトルを検討した。その結果、ヒアルロン酸糖鎖シグナルの抑制により、抗がん剤シスプラチンによるがん細胞の細胞死が上昇し、抗がん剤抵抗性が減弱することを明らかにした。また、研究項目のうち「タンパク質O-GlcNAc修飾と薬剤耐性スペクトルとの関係性解明」については、O-GlcNAc修飾が進行性乳がん細胞で上昇していることを明らかにし、O-GlcNAc転移酵素の阻害剤によるO-GlcNAc修飾の阻害が、がん幹細胞性を抑制することを示した。さらに、阻害剤によるO-GlcNAc修飾の抑制が、ヒアルロン酸糖鎖シグナルの抑制により低下したシスプラチン抵抗性を再度上昇させることを明らかにした。 上述のように令和元年度に計画していた研究については、研究計画に沿って実験を進め、概ね当初の目標を達成した。
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Strategy for Future Research Activity |
令和元年度は概ね順調に研究が進行したことから、今後についても、当初計画通りに効率的な計画の実施に努める。令和2年度は、前年度の研究課題を継続して実施するとともに、当初計画にある「薬剤耐性スペクトル狭小化の検討」として、グルタミンアナログやGlcNAcアナログをスクリーニングして、ヘキソサミン合成経路やO-GlcNAc修飾に阻害作用を示す候補物質を特定する。そして、候補物質については、がん幹細胞の薬剤耐性スペクトルに及ぼす作用を解析し、創薬シーズとして確立することを目指す。
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Causes of Carryover |
研究計画のうち一部の計画を除き、計画に沿って実験を実施した。研究開始年度に研究補助員の採用が不調に終わったことを受け、研究項目のうち「タンパク質O-GlcNAc修飾と薬剤耐性スペクトルとの関係性解明」を当初予定より遅れて今年度に実施した。そのため、研究開始時における計画の一部に若干の変更が生じている。研究開始時の実験補助員の採用がずれ込んだことにより、執行を予定していた実験補助員に係る人件費および消耗品費の一部が順次繰り越しとなっている。以上の理由により、次年度使用額が発生している。 計画変更となった研究については、実験補助員の勤務時間を見直して対応する。また、実験計画の見直しに伴って必要となる生化学実験や分子生物学実験、細胞培養のための消耗品については、物品費を計上して対応する。
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