2020 Fiscal Year Research-status Report
ヘキソサミンシグナル伝達経路を標的とした薬剤耐性スペクトルの狭小化とがん創薬
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18K06671
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
板野 直樹 京都産業大学, 生命科学部, 教授 (40257712)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | がん幹細胞 / ヒアルロン酸 / ヘキソサミン合成経路 / シグナル伝達 / 薬剤耐性 |
Outline of Annual Research Achievements |
多剤耐性を示すがん幹細胞集団の出現は、化学療法が奏功しない最大の要因になっている。代表者らは前年度までに、糖代謝の中心プログラムであるヘキソサミン合成経路と連動したヒアルロン酸糖鎖シグナルとタンパク質のO-GlcNAc修飾が、がん幹細胞の薬剤耐性の制御において相互補完的に機能していることを明らかにしてきた。本年度は、がん幹細胞の薬剤耐性を制御するヘキソサミン代謝シグナル伝達経路の更なる特定を目的に、研究に取り組んだ。 タンパク質のO-GlcNAc修飾は、シグナル分子の活性制御に重要である。そこで、がん幹細胞の自己複製との関連が示唆されているPI3K/ Aktシグナル伝達経路やその下流で制御されるGSK3βに着目して、これらシグナル分子のリン酸化状態をウエスタンブロット法により解析した。その結果、ヘキソサミン合成経路の加速しているヒアルロン酸過剰産生乳がん細胞では、Akt のSer473とThr308のリン酸化が亢進し、逆に、ヒアルロン酸欠損乳がん細胞では低下していることが明らかとなった。また、ヒアルロン酸過剰産生乳がん細胞では、Aktのリン酸化と一致して、GSK3βのリン酸化が亢進していた。GSK3βのリン酸化は、β-カテニンの安定化と核移行を可能にする。そこで、β-カテニンの発現をウエスタンブロット法により解析した。その結果、GSK3βのリン酸化状態と一致して、β-カテニンの発現がヒアルロン酸過剰産生乳がん細胞で上昇し、逆に、ヒアルロン酸欠損細胞で低下していることが明らかとなった。以上より、ヘキソサミン合成経路が、PI3K/Akt-GSK3β-β-カテニンシグナル伝達経路を制御することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和2年度に予定していた研究項目のうち「ヘキソサミンシグナル伝達経路の網羅的解析」については、研究実績の概要で記載した通り、ヘキソサミン合成経路が、タンパク質のO-GlcNAc修飾に影響して、PI3K/Akt-GSK3β-β-カテニンシグナル伝達経路を制御することを明らかにし、予定していた研究項目の一部についてその目的を達成した。しかしながら、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い発出された緊急事態宣言以降、研究代表者や研究協力者の大学への入構自粛などもあり、研究開始時期が遅れ、当初予定していた期間内に計画を完遂することが困難となった。夏以降、感染状況の改善とともに大学への入構制限も順次緩和され、実験を再開したが、緊急事態宣言が再度発出される状況となり、研究の実施に大きな支障が出た。新型コロナウイルス感染症という予期せぬ事態により、研究が遅延した。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度は現在までの進捗状況で記載した通り、新型コロナウイルス感染症の影響により計画していた研究が遅延した。この状況を受け、令和2年度に計画していた研究のうち、「薬剤耐性スペクトル狭小化の検討」については令和3年度に実施時期を変更する。具体的には、グルタミンアナログやGlcNAcアナログをスクリーニングして、ヘキソサミン合成経路やO-GlcNAc修飾に阻害作用を示す候補物質を特定する。そして、候補物質については、がん幹細胞の薬剤耐性スペクトルに及ぼす作用を解析し、創薬シーズとして確立することを目指す。
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Causes of Carryover |
採用した研究補助員が雇用予定期間終了前に退職し、予定していた研究の一部が未実施となった。また、新型コロナウイルス感染症という予期せぬ事態により、研究が遅延した。以上の理由により、執行を予定していた実験補助員に係る人件費および消耗品費の一部が未執行となり、次年度使用額が発生している。 計画変更となった研究については、実験補助員を新たに採用して対応する。また、実験計画の見直しに伴って必要となる生化学実験や分子生物学実験、細胞培養のための消耗品については、物品費を計上して対応する。
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