2019 Fiscal Year Research-status Report
熱ストレスによるStat3活性化と癌悪性化の可能性
Project/Area Number |
18K06672
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Research Institution | Kyoto Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
齊藤 洋平 京都薬科大学, 薬学部, 助教 (90411032)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 熱ストレス / Hsp / Stat / 低酸素 / HIF / VEGF |
Outline of Annual Research Achievements |
ストレス応答は、熱ショックタンパク質(Hsp)の発現を介して細胞の恒常性維持に寄与する。一方、がん細胞においては、温熱や薬剤に対して抵抗性を引き起こすことから治療の妨げとなる。これまでにHspの発現メカニズムとしてStat3の関与を明らかにしており、本研究により、熱ストレスによるStat3活性化とその意義としてがん細胞における温熱耐性獲得へのStat3活性とHsp105の関与を明らかにした。一方、これまでにHIF-1α誘導剤である塩化コバルト処理によりと熱ストレスを併用するとHIF-1αが顕著に増加することを見い出しており、本年度は主として、HIF-1α発現亢進やHIF-1応答遺伝子発現に及ぼす熱ストレスの影響を調べることで以下の結果を得た。
熱ストレスによるHIF-1の蓄積亢進は、塩化コバルト処理時のみでなく、1%の低酸素条件下においても観察された。この熱ストレスによるHIF-1αの蓄積へのStat3の関与について、siRNAや阻害剤を用いて調べたところ、HIF-1αの蓄積量に大きな変化はなかった。Hsp105の関与について調べたところ、shRNAの標的配列の違いによって結果が異なり、結論に至らなかった。一方、TaqManプローブを利用したリアルタイムPCRによるmRNA発現解析の実験系を立ち上げ、熱ストレスによるHIF-1αの発現増加が転写レベルでは起こらないことを示した。さらに、熱ストレスによりHIF-1の下流分子であるVEGF mRNAの発現が増加することを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
熱ストレスがHIF-1αのタンパク質レベルでの蓄積を引き起こすこと、HIF-1の下流遺伝子としてVEGF mRNA発現を増加させることを、生理条件下に近い低酸素培養条件下で示すことができた。昨年度、Hsp105の温熱耐性への寄与を報告したが、本年度は、抗がん剤抵抗性へのHsp105の関与について論文として報告した。
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Strategy for Future Research Activity |
熱ストレスによるVEGF発現誘導が血管新生を引き起こす可能性について調べていく。予備的な結果ではあるが、熱ストレスによるがん細胞の転移能が亢進すること見出している。熱ストレスが血管新生や転移浸潤を引き起こし、がん悪性化に寄与する可能性について検証する。
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Causes of Carryover |
実験に使用予定の物品を購入できていたこと、ならびに一部の研究について進捗状況に遅れが生じたことにより、次年度使用額として137,303円が生じた。使用予定であるELISAキットやVEGF、IL-6などのサイトカイン、siRNAの購入費にあてる。
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[Journal Article] Hsp105α suppresses Adriamycin-induced cell death via nuclear localization signal-dependent nuclear accumulation2019
Author(s)
Yamane T, Saito Y, Teshima H, Hagino M, Kakihana A, Sato S, Shimada M, Kato Y, Kuga T, Yamagishi N, Nakayama Y.
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Journal Title
J. Cell. Biochem.
Volume: 120
Pages: 17951-17962
DOI
Peer Reviewed
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