2019 Fiscal Year Research-status Report
覚醒剤・麻薬中毒状態における脳内Exosomeの統合オミクス解析
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18K06674
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Research Institution | Kobe Gakuin University |
Principal Investigator |
山下 琢矢 神戸学院大学, 薬学部, 助教 (10645203)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | Exosome / 危険ドラッグ / 統合オミクス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では覚醒剤・麻薬中毒状態で放出されるExosomeが脳の恒常性に及ぼす影響を統合オミクス(プロテオミクス・リピドミクス・メタボロミクス)解析により明らかにすることを目的とする。本研究で得られた結果は、脳内Exosomeの機能に関する重要な科学的基礎情報となり、将来的にExosomeを活用した新規疾患診断法や治療法の開発に繋がることが期待される。2018年度は乱用薬物を曝露させたヒト神経細胞由来Exosome(HN-EXO)の基礎物性評価を実施し、Exosomeの粒子数とExosomeマーカーの発現量を最も減少させる乱用薬物として、4-methoxy amphetamine(4-MeO AP)を見出した。 本年度は4-MeO APに着目したHN-EXOのリン脂質網羅解析を実施するために、まずHN-EXOの抽出条件とLC-ESI-MS/MSのイオン化条件を最適化した。その結果、細胞培養液からExoquick試薬を用いたポリマー沈殿法により抽出したHN-EXO由来リン脂質の良好なクロマトグラムを得ることができた。次に、4-MeO APとAPを曝露したHN-EXOのリン脂質網羅解析を実施した結果、高濃度(500 μM)の4-MeO APを曝露させたHN-EXOでは Docosahexaenoic Acid (DHA)を含むリン脂質が減少している事が示唆された。一方で低濃度(50 nM)のAPではすべてのリン脂質量が増加する傾向が得られた。以上の結果から4-MeO AP はHN-EXOを構成するリン脂質成分のうち神経細胞膜の流動性を決定する分子であるDHA量に大きな影響を及ぼす可能性が示された。DHA量の減少は神経炎症をはじめ、アルツハイマー病など各種神経疾患の発症・悪化に関連している。今後、統合オミクス解析を進める上で、依存性や各種病態との関連性も考慮して研究を推し進めたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度予定していた「乱用薬物を曝露させたHN-EXOのオミクス解析」のうちリピドミクス解析が終了した。しかしながら、新型コロナウイルスによる影響(大学施設の閉鎖、在宅勤務、研究協力者である学生の登校禁止)により、プロテオミクス解析実施までに至らなかった。以上の事由により、本研究課題の進捗に遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度前半は新型コロナウイルスによる影響が引き続き考えられるため、予定を立てること自体困難な状況ではあるが、外部委託などあらゆる手段を講じ、当初予定していた以下のオミクスならびに統合オミクス解析を完遂したいと考えている。
プロテオーム解析:各乱用薬物を曝露した細胞由来Exosomeから得られた蛋白質はLC-ESI-MS/MSを用いたショットガンプロテオーム解析することで変動蛋白質を同定する。
メタボローム解析:メタノールとクロロホルムを使用した一般的な液液抽出法でサンプル前処理し、LC-ESI-MS/MSのMultiple Reaction Monitoringモードで変動分析する。
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