2020 Fiscal Year Research-status Report
乳がん悪性化をもたらす亜鉛トランスポーターの分子機能解明と亜鉛シグナルの解析
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18K06676
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Research Institution | Mukogawa Women's University |
Principal Investigator |
中瀬 朋夏 (高谷朋夏) 武庫川女子大学, 薬学部, 教授 (40434807)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 乳がん幹細胞 / 亜鉛 / 亜鉛トランスポーター / PRDM14 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまで、乳がん幹細胞様細胞(BCSC)の生存と維持には、亜鉛イオン依存的なPR domain zinc finger protein 14 (PRDM14)の活性制御が必要であることを明らかにしてきた。これは、BCSCを標的とした治療法の確立には、乳がんにおける亜鉛イオンの動態制御が鍵を握ることを示唆する。本年度は、BCSCの維持制御機構における亜鉛トランスポーターの役割を解析し、亜鉛シグナルの発信と乳がん悪性化のメカニズムを基にした新たな治療戦略への展開を目指した。 ヒト乳がん細胞MCF-7を非接着条件下無血清培地でスフェア培養した。その結果、BCSCの特徴的な性質を有した球状集塊(スフェア)を形成し、亜鉛トランスポーターZIP6の遺伝子発現量は、通常培養と比較して、スフェア培養由来細胞で著しく低いことを明らかにした。スフェア形成に対するZIP6の発現低下が果たす役割を明らかにするため、ZIP6安定ノックダウン細胞を用いて、BCSCの特徴を検討した。その結果、ZIP6ノックダウン細胞はZIP6の発現量の減少とともにZIP7の発現比率が上がることで、小胞体から細胞質方向への亜鉛イオンの供給を活性化し、PRDM14依存的にBCSCの形質を示すことが示唆された。 さらに、スフェア培養由来のMCF-7を乳腺に同所移植し、ZIP7阻害剤であるNVS-ZP7-4の投与がBCSCの腫瘍形成能力と転移に与える影響を検討した。その結果、スフェア培養由来MCF-7が持つ高い腫瘍形成能力はNVS-ZP7-4投与により顕著に抑制され、腫瘍周辺の血管や転移も抑制される傾向にあった。 以上より、ZIP6-ZIP7-PRDM14を介した亜鉛シグナル基軸の阻害は、BCSCの機能を抑制できることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、乳がん幹細胞の維持に、亜鉛トランスポーターの役割をin vitro、in vivoにおいて、検討した。本研究成果から、乳がん幹細胞の亜鉛シグナルに基づいた新たな治療法開発につながる糸口を見出した。しかし、亜鉛シグナルとがんの生育に重要な他の必須微量元素、とりわけ鉄の代謝との関連、がん低酸素環境の影響について、重要な知見を得つつあり、新たな乳がん分子標的治療法開発への展開には、継続的に追加実験が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
乳がんは、生体内で単独で存在しているのではなく、がんの周辺はもちろんのこと、がん組織から離れた正常組織とも互いにコミュニケーションすることで、がん自身にとって有利な戦略を仕掛けている。この乳がん細胞が支配している生体内での悪性化機構と亜鉛シグナルによる乳がん幹細胞の制御機構との連関機序解明のため、細胞モデルおよびin vivo担がんモデルを作製し、がん微小環境との相互作用、血管新生、周辺組織と亜鉛シグナルの発信意義について解析する。細胞モデルとしては、Tet誘導shRNAシステムを用いてZIP6を可逆的かつ特異的に発現制御できる細胞を構築し、遊離亜鉛イオン応答性タンパク質ラベル化試薬を用いて亜鉛の細胞内動態とターゲット分子および金属を可視化し、亜鉛イオン輸送経路を解析できる時空間的マップを作成する。
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Causes of Carryover |
2020年度、乳がん幹細胞モデルを用いて、乳がん幹細胞の維持機構を説明できる亜鉛シグナルを解析し、その結果を基に、学会発表する予定であった。しかし、細胞モデルの作製の不具合ならびに動物実験の一部分について、がん形成の状況から、データの取得が不可能な事態が生じ、計画の変更と追加実験が必要となった。さらに、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、計画していた学会発表を行うことができなかった。追加実験とその研究成果の発表に関しては、次年度に実施し、未使用額はその経費に充てる。
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Research Products
(22 results)
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[Journal Article] Environmental pH stress influences cellular secretion and uptake of extracellular vesicles2021
Author(s)
Ikuhiko Nakase, Natsumi Ueno, Mie Matsuzawa, Kosuke Noguchi, Mami Hirano, Mika Omura, Tomoya Takenaka, Ayaka Sugiyama, Nahoko Bailey Kobayashi, Takuya Hashimoto, Tomoka Takatani-Nakase, Eiji Yuba, Ikuo Fujii, Shiroh Futaki, and Tetsuhiko Yoshida
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Journal Title
FEBS Open Bio
Volume: 11
Pages: 753-767
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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