2018 Fiscal Year Research-status Report
細胞膜内層のスフィンゴミエリンの解析-フリッパーゼの同定と生理的意義の解明-
Project/Area Number |
18K06677
|
Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
阿部 充宏 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 専任研究員 (90415068)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | スフィンゴミエリン / フリップフロップ / CRISPR/Cas9 / ノックダウン / 細胞膜 |
Outline of Annual Research Achievements |
スフィンゴミエリン(以下,SM)は細胞膜に局在するスフィンゴ脂質であるが,約90%は細胞膜外層に,約10%は細胞膜内層に局在し,特徴のある脂質ドメインを形成していた。これらを説明するために,合成された直後のSMは細胞膜外層に局在するが,未知の因子によって,少量のSMが細胞膜内層にフリップされ特徴のある脂質ドメインを形成する可能性が考えられた。本研究では,細胞膜内層にフリップさせる因子を同定し,その分子機構を明らかにするとともに,細胞膜内層にあるSMの生理的意義についても明らかにすることを目的とする。本年度は,SMのフリップに必要な因子を同定するために,ノックダウンのライブラリー(System Bioscience, #SI206PB-1)を用いて,遺伝学的なスクリーニングを行った。この変異株を選別するために,以下のストラテジーを用いた。あらかじめHeLa細胞の細胞質中にSM分解酵素を発現させた場合,細胞膜外層のSMがフリップされ内層で分解されるため,細胞膜外層のSM量が低下する。この株に,HeLa細胞にノックダウンのライブラリーを発現させ,細胞膜外層のSMが減少しない変異株を選別した。SMが減少しない変異株は,サイクロデキストリンに耐性を示すことが報告されていることから(Hanada et al., 2003),サイクロデキストリンに耐性を示す変異株を選別した。その結果,約10個の変異株が得られ,原因遺伝子が同定された。候補遺伝子について,CRISPR/Cas9を用いてHeLa細胞のノックアウト細胞を作製し,その細胞質中でSM分解酵素を発現することで,同じ表現型を示すかを確認した。約10個の変異株のほとんどで,再現性が見られたため,これらの因子を次年度以降の解析に進める。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1次スクリーニングで約10個の変異株が得られ,CRISPR/Cas9で別途作製した変異株でも再現性が見られている。一方,フリーズフラクチャー電子顕微鏡解析は,連携研究員の村手研究員がフランスへ転出したため、次年度以降に行う。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度は生化学的な実験を行い,得られた因子がどのような分子機構で,SMを細胞膜外層から内層へのフリップさせるのかを考察する。まず,大腸菌または昆虫細胞によって,得られた因子のリコンビナントタンパク質を作製する。リコンビナントタンパク質と,リポソームを混ぜ合わせ,フリップフロップの生化学的な解析を行う。また,脂質との結合実験を行うために,脂質の構成成分を変えたリポソームと,リコンビナントタンパク質を用いる。リコンビナントタンパク質が脂質をフリップする際に脂質二重層の形状を変化させる可能性が考えられるため,リコンビナントタンパク質を混ぜ合わせた時のリポソームの大きさや形状の変化を観測する。これらは,ネガティブ染色やナノ粒子マルチアナライザーによって測定する。
|
Causes of Carryover |
本年度に計画していたフリーズフラクチャー電子顕微鏡解析は,連携研究員の村手研究員がフランスへ転出したため、次年度以降に行う。
|