2018 Fiscal Year Research-status Report
心筋カリウムチャネル複合体を介した心筋興奮終焉期の電気―Ca2+同期機構の検証
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18K06683
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
児玉 昌美 東京大学, 定量生命科学研究所, 特任研究員 (30512248)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
黒川 洵子 静岡県立大学, 薬学部, 教授 (40396982)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | イオンチャネル / 分子間相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、IKsチャネル分子複合体が、心筋興奮終焉期の同期システムとして機能する可能性を検証することよって、心筋の恒常的な電気活動とその破たんである不整脈におけるIKsチャネル分子複合体の役割を明らかにすることである。成体ヒトIKsチャネルトランスジェニック(IKsTG)マウスの心室細胞抽出液から、免疫沈降法でIKsチャネル分子複合体を単離した際、質量分析(連携研究者; 永森)によって、相互作用する分子を新たに網羅的に探索したところ、Na+/Ca2+交換輸送体(NCX1)が同定されたことから、この分子に着目し、研究を進めた。 IKsチャネルとNCX1の相互作用は、野生型モルモットおよびイヌの心室細胞においても、免疫沈降物のウェスタンブロッティングによって認められたことから、哺乳動物に広く共通することが期待できる。 研究計画に従って、両分子上の相互作用領域の同定に努めた。IKsチャネルの細胞内領域-GST融合タンパク質とNCX1細胞内領域-MBP融合タンパク質を作成し、GSTプルダウンアッセイを行い、相互作用に必要な領域を絞り込んだ。また両分子の相互作用を確認する手法として、野生型イヌの心室細胞抽出液とIKsチャネルの細胞内領域-GST融合タンパク質を用いたGSTプルダウンアッセイでも、同様の結果が得られることを確認した。IKsチャネル、NCX1は共に高分子量の膜タンパク質で全長を発現・精製して用いることが難しいが、この手法を用いることで、全長のタンパク質を相手にした解析が容易になった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究においては、IKsチャネルとNCX1の機能連関に両分子の複合体形成が必要か否かが1つのカギになると考えている。この点を明らかにするためには、両分子上の相互作用領域の同定が最も重要であるが、これまでに今後の研究計画の遂行に必要な情報は得られたと考えており、分子複合体形成の競争的阻害のためのペプチドを作成するための準備も始めている。また、カルモデュリン・Ca2+ポンプなどのNCX1以外のCa2+動態関連因子の阻害剤が分子複合体形成に与える影響についても解析も行っている。 IKsチャネル、NCX1は共に高分子量の膜タンパク質で全長を発現・精製して用いることが難しいが、野生型イヌの心室細胞抽出液とIKsチャネルの細胞内領域-GST融合タンパク質を用いたGSTプルダウンアッセイで両者の相互作用を確認できた。この手法を用いれば、今後、より容易に全長のタンパク質を相手に阻害剤やイオン濃度の与える影響などを解析できると期待できる。これらのことから「おおむね順調」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究では、IKsチャネルの機能の電気生理学的解析を主に行う。研究計画に基づいて、ホールセルパッチクランプ法でIKs電流を計測し、NCX阻害剤(YM 244769/KB-R7943)がIKsチャネル活性に与える効果を調べる。結果に応じて、必要が認められる場合には、カルモデュリン・Ca2+ポンプなどのNCX1以外のCa2+動態関連因子の阻害剤についても解析を行う。 生化学・分子生物学的実験では、これまでに得られた情報を基に、IKsチャネルとNCX1の相互作用領域に相当するペプチドを精製し、このペプチドを添加することで分子複合体形成を競争的に阻害できるかをin vitro Pull-down assayで確認する。また、Ca2+動態関連因子の阻害剤が分子複合体形成に影響を及ぼすかについても検討する。 分子複合体の形成阻害条件を明らかに出来たら、その方法を電気生理学的解析に応用し、NCX1によるIKsチャネルの機能制御に、複合体形成が必要か否かを明らかにする。ペプチドや阻害剤の添加による阻害がうまくいかなかった場合は、野生型/複合体形成不可の変異型KCNQ1を、内在性KCNQ1非検出のマウス心筋培養細胞HL-1(NCX1は検出された)に強制発現して用いる。
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