2019 Fiscal Year Research-status Report
Mechanisms for increase of TRP channels in visceral hypersensitivity in inflammatory and functional bowel disease model animals
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18K06688
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Research Institution | Josai International University |
Principal Investigator |
堀江 俊治 城西国際大学, 薬学部, 教授 (50209285)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 内臓知覚過敏 / 炎症後過敏性腸症候群 / 非びらん性胃食道逆流症 / 温度感受性TRPチャネル / 一次求心性知覚神経 / TRPM8 / 痛覚過敏 / TRPV1 |
Outline of Annual Research Achievements |
二年目は、種々の炎症性消化管疾患モデルおよび機能性消化管疾患モデルの病態モデル動物を作製し、その消化管過敏性(主に痛覚過敏)を検討した。病態モデルの結腸・直腸凍結切片において、熱刺激TRPV1および冷刺激TRPM8発現知覚神経が増加しているか、また、組織学的にどこの部位で増加しているかについても検討した。 (1)既報を参照にラットを用いた慢性の逆流症食道炎モデル(炎症性)及びこれを応用した非びらん性胃食道逆流症モデル(機能性)を作製した。逆流症食道炎モデルにおいて、炎症が慢性化すると下部食道括約筋(LES)においてNO作動性TRPV1発現神経線維が増加していることが観察された。さらに、内在性TRPM8発現神経細胞も増加することでLESの収縮が抑制されやすくなっていることが示唆された。下部食道粘膜層においては、TRPV1発現神経線維が増加しており逆流した酸に過敏な状態になっていた。これが胸やけ症状として知覚されていると推察した。非びらん性胃食道逆流症モデルにおいても、その程度は低いが同様の結果を得た。 (2)マウスにデキストラン硫酸水溶液を3日間自由飲水させその後水道水に替え14日目まで飼育することで、炎症後過敏性腸症候群の新しいモデルを作製することができた。このモデルでは、消化管の炎症は正常レベルまで回復していたにもかかわらず消化管における痛覚過敏が認められた。この痛覚過敏にはマスト細胞とサイトカインの増加の関与が考えられた。 (3)酪酸を連日注腸することで既報通り過敏性腸症候群モデルラットを作製した。このモデルの結腸組織を免疫組織化学的手法で解析したところ、内在性TRPM8発現知覚神経細胞数の増加が観察され、細胞体は筋間神経叢に存在し、神経線維は粘膜固有層まで伸展していた。これが管腔側からの化学的刺激による疼痛過敏に関与していると推察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現状、消化器病関連の学会では炎症性及び機能性消化管疾患における消化管知覚過敏はその病態ごとに議論がなされている。一方、当該研究者はこれらの消化管疾患には共通する「微細炎症」の病態生理メカニズムがあることを想定している。現在当初計画にはなかった慢性胃食道逆流症、非びらん性胃食道逆流症、炎症後過敏性腸症候群、機能性ディスペプシア、慢性便秘症の病態動物モデルを新たに作製した。これら新たに確立した種々の消化管疾患モデル動物において内臓知覚過敏性は温度感受性TRPV1・TRPM8発現神経の増大が関与しているということを検証していきたいと考えている。 このため、予定していた酪酸誘起過敏性腸症候群モデル動物におけるTRPチャネルの免疫染色と消化管機能に関する検討はやや遅れているものの、その他は目論見通りの研究成果があげられてきている。
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Strategy for Future Research Activity |
確立した機能性消化管疾患モデルを用いて以下の3点を検討していく。 1.種々の病態モデルの食道・胃・結腸・直腸凍結切片において、組織学的にどこの部位で、熱刺激TRPV1および冷刺激TRPM8発現知覚神経線維の伸展がみられているか? 2.病態モデルで消化管運動反応及び疼痛反応の亢進がTRPV1およびTRPM8を介するしているか? 3.内因性の神経栄養因子、ケミカルメディエーター、プロスタグランジンの作用を遮断薬によって抑制した場合知覚神経線維増加と運動・疼痛の異常亢進は抑えることができるのか? これらの検討により、微細炎症により引き起こされた温度感受性TRPチャネル発現知覚神経線維数の増大が知覚過敏性に関与しているという仮説を検証していく。
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Causes of Carryover |
二年間の決算の結果、最終年度使用額として229,282円が生じた。これまで直接経費の使用はほぼ予定通りであったといえる。ただし、この3月に新型コロナ感染症防止のための大学閉鎖により、予定していた酪酸誘起過敏性腸症候群モデル動物におけるTRPチャネルの免疫染色と消化管機能に関する検討が中断してその分の残金が生じた。最終年度は中断したこの検討から再開する予定である。したがって、正常動物と酪酸誘起過敏性腸症候群病態モデル動物から結腸、直腸凍結切片を作製しTRPチャネルがどこに局在しているのかを免疫組織化学的手法で検討するために、次年度繰越金額は実験用マウスと免疫染色用タイラマイド(TSA)を購入する。
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Research Products
(24 results)