2019 Fiscal Year Research-status Report
線維芽細胞の働きを選択的に抑制する分子機構の解明と肺線維症治療への応用
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18K06691
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Research Institution | Musashino University |
Principal Investigator |
田中 健一郎 武蔵野大学, 薬学部, 講師 (30555777)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 肺線維芽細胞 / 肺線維症 / IPF / スクリーニング / 細胞死 |
Outline of Annual Research Achievements |
特発性肺線維症 (IPF) は、肺が線維化して呼吸困難を来たす難病であり、診断後の平均生存年数が約3年と非常に短い。そのため、IPFを治療するための新たな ターゲット分子を発見し、効果が高く、副作用の少ない治療薬を開発する事が重要である。IPFの発症・増悪には、活性酸素などによる肺胞上皮細胞傷害をきっ かけとした肺線維芽細胞の異常増殖や活性化 (コラーゲン過剰産生など) が大きく関与する。これまでに、既承認薬ライブラリーを用いたスクリーニングを行 い、肺胞上皮細胞に傷害性を示さず、線維芽細胞選択的に細胞死を誘導する化合物(既承認医薬品)を発見している。昨年度の解析から、候補化合物が既存のIPF治療薬であるピルフェニドンやニンテダニブに比べて、IPF動物モデルでの肺線維化や呼吸機能低下を有意に改善することを見出した。そこで、本年度は、副作用に注目した解析を実施した。既存IPF治療薬では、消化不良、下痢、肝機能障害などの副作用が誘発されることが報告されているので、これらの副作用に着目して、既存薬との比較を行った。その結果、ピルフェニドンやニンテダニブで見られた肝臓における副作用が、候補化合物の投与ではほとんど見られなかった。一方、消化器系の副作用については、全ての薬剤でほとんど誘発が見られなかった。in vitroの解析では、候補化合物が線維芽細胞選択的に作用する機構の解析を行った。その結果、候補化合物の同種同効薬では線維芽細胞選択的に作用する現象が見られなかったことから、候補化合物が元々知られている作用とは異なる機構を介して、線維芽細胞選択的に作用している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
動物モデル(ブレオマイシン肺傷害モデル)を用いて、候補化合物と既存IPF治療薬(ピルフェニドン、ニンテダニブ)との有効性解析の比較が完了し、候補化合物が既存IPF治療薬に比べて有効性が高い可能性を示唆している。また、副作用の比較実験においても、候補化合物は既存IPF治療薬に比べて、肝臓における副作用をほとんど起こさないことを見出した。さらに、in vitroの解析においても、候補化合物が線維芽細胞選択的に作用する機構の一部を明らかにすることができた。以上の理由より、本研究計画はおおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の解析から、候補化合物は既存IPF治療薬に比べて、肝臓における副作用をほとんど起こさないことを見出した。肝臓における副作用については、組織解析等を実施することにより、より確かなデータを得たいと考えている。臨床においては長期間投与することも予想されるので、長期間投与した場合の副作用についても解析予定である。一方、候補化合物が線維芽細胞選択的に作用する機構については、候補化合物の元々知られている作用とは異なる機構を介する可能性を見出している。そこで、肺線維芽細胞細胞に候補化合物を処理した時の遺伝子発現変化をマイクロアレイ法などにより網羅的に解析する。また、その結果を元にパスウェイ解析を行い、候補化合物が作用する可能性の高いターゲット分子をリストアップする。その後、候補分子の発現をsiRNAやCRISPR-Cas9で抑制した条件で、候補化合物による線維芽細胞選択的な細胞死誘導などの解析を行いたい。
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Causes of Carryover |
当初の計画より消耗品を安く購入できたため、わずかな余剰分が生じた。余剰分に関しては、翌年度の消耗品費用として使用したい。
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