2018 Fiscal Year Research-status Report
脂肪幹細胞を用いたDDSと高周波温熱療法併用による新規がん治療法の開発
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18K06693
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Research Institution | Osaka Medical College |
Principal Investigator |
後藤 昌弘 大阪医科大学, 医学部, 准教授 (80351419)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊井 正明 大阪医科大学, 研究支援センター, 講師 (10442922)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 脂肪組織由来幹細胞(AdSC) / 腫瘍選択的DDS製剤 / ハイパーサーミア |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、動物実験に使用するナノ粒子の作製と脂肪幹細胞の機能評価を行ない、ピラルビシン・酸化鉄封入ポリ乳酸ナノ粒子(Pirarubicin/Fe2O3/PLA-NP)を合成することに成功した。まず始めに、酸化鉄微粒子を封入したポリ乳酸ナノ粒子(Fe2O3/PLA-NP)をヒト脂肪組織由来間葉系幹細胞(human adipose-derived stem cell: hAdSC)に抱合させて細胞機能評価を行った。これまでの研究成果による条件から、50μg/50000個の割合でFe2O3/PLA-NPを0, 25, 50, 100, 200, 300μg/AdSCの割合で取り込ませた細胞を用いて遊走能評価実験を行い、200μg取り込ませた細胞が最も遊走することが明らかになった。次に癌細胞(LoVo:ヒト結腸線癌とKP1N:ヒト膵癌)への細胞遊走能を評価したところ、Fe2O3/PLA-NPを取り込ませた時とは異なる結果となり、癌細胞種によって反応が異なることも判明した。LoVoにおいては、50μgの反応量で最も遊走能が亢進し、KP1Nにおいては、25μgの反応量で最も遊走能が亢進し、それより高濃度になると減少傾向を示し、200μgで遊走しなくなった。続いて、合成に成功したPirarubicin/Fe2O3/PLA-NPを用いて癌細胞への遊走能を評価した。その結果、LoVoでは25μgの反応量で、KP1Nでは50μgの反応量で遊走能が最大となった。この結果は、これまでの実験結果と逆の結果となっているが、ナノ粒子合成時にピラルビシンが加わったことにより、酸化鉄微粒子の含有量が変化した為と考えられる。しかしながら、高濃度で遊走能が消失することは共通しており、いずれの癌細胞株でも100μgで遊走能が消失している。これは酸化鉄よりもピラルビシンの細胞に対する毒性が強く影響しているためと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね順調に進んでいる。 今年度は治療研究に必要な薬剤、鉄微粒子複合体ナノ粒子の合成に成功した。更に、細胞遊走能評価実験から癌細胞株の種類による遊走能の変化が明らかとなり、各癌細胞株に対して最適なナノ粒子抱合量を決定することが出来た。次年度は決定したナノ粒子抱合量を基に、その抱合量が癌細胞に対して効果的な薬効を示すか共培養試験により癌細胞の死細胞数を計測するとともに、合成したPirarubicin/Fe2O3/PLA-NPの物性評価を行い、薬剤と鉄微粒子の含有量を決定した上で再度Vitro実験を行う予定である。当初の計画通りであり、特に今後の研究推進のために問題点なども現状では抱えていない。
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Strategy for Future Research Activity |
抗がん剤PLGAナノ粒子及び酸化鉄コロイド粒子二重抱合AdSCの細胞機能を評価し、担がんマウスモデルを用いた抗がん剤PLGAナノ粒子+酸化鉄コロイド粒子抱合AdSC移植による治療効果確認とそのメカニズムを解明する。
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Causes of Carryover |
研究費の次年度使用額が生じた理由については、今年度の実験はvitroの実験が中心であり、①実験に必要な消耗品を販売キャンペーン期間にまとめて購入し、節約して使用したこと②予備実験の実験結果が予想以上に早く得られたことによって、次年度に使用予定額の一部を持ち越すことになった。 次年度研究計画については、次年度には、動物愛護の観点からVitro実験への移行を慎重に進めていく。癌細胞保有モデルマウスの作製を行うと同時に、高周波照射後に起こる高温時の細胞機能の変化も検証する。そして、この結果を基にして担癌モデルマウスの治療効果の評価実験を行う。治療効果は腫瘍サイズの経時的な計測と治療開始4週間後のマウスの組織解析によって評価し、移植した高機能化脂肪組織細胞の生体内の薬物動態を明らかにする。 動物実験では、①PBS投与(Control)群、②RosaAdSC(1x10^4/マウス)投与群、③Pirarubicin/Fe2O3/PLA-NP投与群、④RosaAdSC - Pirarubicin/Fe2O3/PLA-NP(10μg/1x10^4/マウス)投与群に実験群を設定してそれらの治療効果を比較検討する。次年度使用額はこれらの費用に充てる予定である。
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