Selective effects of metformin on the cells with PIK3CA activating mutations

2018 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 18K06696
• Research Institution: Institute for Developmental Research, Aichi Human Service Center
• Principal Investigator: 鈴木 康予 愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所, 遺伝子医療研究部, 研究員 (60416188)
• Project Period (FY): 2018-04-01 – 2021-03-31
• Keywords: 過成長症候群 / 体細胞モザイク変異 / PI3K / メトホルミン

Outline of Annual Research Achievements

近年提唱されたPIK3CA-related overgrowth spectrum (PROS)という疾患概念は、PI3Kの触媒サブユニットをコードするPIK3CA遺伝子の活性化変異で発症し、出生時あるいは出生直後より脂肪組織や骨格などにモザイク性の肥大が認められる過成長症候群のひとつである。我々は、出生時より下肢及び趾の肥大と合指症、下肢長差を呈するPROS症例を経験し、病変組織よりPIK3CAのヘテロ接合性モザイク変異(c.3140A>G, [p.H1047R]) を同定した。治療方法の開発のため、PROSの疾患モデルとして本症例の病変部の皮膚組織から樹立し皮膚線維芽細胞株を樹立し、スクリーニングを行った。その結果、メトホルミンは正常細胞に対する毒性が低いが、PROS細胞では選択的に細胞増殖を抑制することが明らかになった。したがって、メトホルミンが成長過程にある小児でも使用可能なPROSの候補治療薬であると考えられた。しかし、メトホルミンは細胞内のシグナル伝達や代謝に及ぼす影響が未だ不明である。最も知られているメトホルミンの作用は、mTORシグナル伝達の抑制を引き起こすAMPKの活性化であるが、メトホルミンによるAMPKのリン酸化は正常細胞とPROS細胞で差が見られなかった。そこで、プロテオーム解析によって、メトホルミンによるPROS細胞に選択的な作用の解明を目指した。迅速に解析を行うために、プロテオーム解析には、メトホルミンによって増殖抑制されることを示す報告が多数あり、PI3Kの上流で働く K-RASの変異型肺癌細A549細胞を用いた。メトホルミンを投与したA549細胞は、分画処理を行い、二次元電気泳動によって解析を行ったところ、ある画分の結果から、メトホルミンの投与によって変動が認められた7種のタンパク質スポットを特定した。

Current Status of Research Progress

4: Progress in research has been delayed.

Reason

施設移転があったが、当初予定されていた時期よりもずれたため、計画していた通りには研究が遂行ができなかった。

Strategy for Future Research Activity

二次元電気泳動によりメトホルミンの投与によって変動が認められたタンパク質を単離し、トリプシンを用いたIn Gel Digestionによりフラグメント化した後、MALDI (Matrix Assisted Laser Desorption/Ionization)-TOF (Time of flight)-MS (Mass Spectrometry)により質量分析を行う。TOF-MSの分析プロファイルからMascotサーチを用いたペプチドマスフィンガープリンティング(PMF)解析によってタンパク質を同定する。同定した候補タンパク質がメトホルミンの作用機序に関与するかどうかを確認するために、まずメトホルミン投与の有り、無しのPROS細胞を用いたウエスタンブロット解析結果を比較することにより、候補タンパク質の変動を確認する。次に、変動が見られたタンパク質がPROS細胞に選択的なメトホルミンの作用に関与しているかどうかを調べるため、メトホルミンを投与したPROS細胞および正常細胞を用いてウエスタンブロット解析を行い、同定した候補タンパク質の動態を解析する。以上の結果から、PROS細胞に選択的にメトホルミンが影響を及ぼすことが確認されたタンパク質は、投与によって増加するタンパク質の場合はノックダウン、減少するタンパク質の場合には過剰発現させたPROS細胞を作製し、メトホルミンのPROS細胞に選択的な効果が消失するかどうか検証する。

Causes of Carryover

メーカーによるキャンペーンなどを利用し、計画的な物品購入を実施した結果、次年度使用額が発生した。次年度の使用計画は、物品費：868,810円、旅費：100,000円、人件費・謝金：100,000円、その他：50,000円である。