2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K06723
|
Research Institution | Tokyo University of Pharmacy and Life Science |
Principal Investigator |
安達 禎之 東京薬科大学, 薬学部, 准教授 (60222634)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | スギ花粉 / 自然免疫 / 糖鎖 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、スギ花粉症の発生要因となるタンパク質性アレルゲン以外に免疫応答を刺激する物質,特に自然免疫系の活性化に関わる成分を解析するために、スギ花粉に含まれる病原体関連分子パターン物質(PAMPs:pathogen-associated molecular patterns)を単離し、その構造や物性、自然免疫系細胞の活性化機構を明らかにすること目的に検討を進めた。 本年度は①スギ花粉からの糖鎖成分抽出及び精製法の検討、②活性型糖鎖の検出及び定量法の検討を行った。①の研究成果:乾燥スギ花粉からの糖鎖成分の抽出法を検討した。スギ花粉症患者の粘膜分泌液の液性に着目し、花粉粉末を弱アルカリ性の緩衝液に浸漬し、水溶性及び不溶性画分に分画した。不溶性画分には花粉の生殖細胞を含む細胞成分と殻成分が含まれ、密度勾配遠心分離法を採用し、細胞と殻に分画できることが分かった。②の研究成果:糖鎖結合性の糖鎖認識タンパク質(CRP)の組換え型タンパク質の発現系を構築し、得られたCRPを用いて、スギ花粉から抽出された糖鎖成分の検出に応用可能か検討し、CRP-ELISA法を完成させた。またCRP固相化カラムにより、糖鎖成分を分離精製できることが明らかとなった。CRP-ELISA法により糖鎖成分の含量を求め、初年度の目標であるmg単位の糖鎖画分が1gの乾燥スギ花粉から分取可能であることが明らかとなった。さらに、組換え型CRP-Fcタンパク質作製を完成させ、花粉中の糖鎖局在を顕微鏡で検討したところ、殻の内側表面及び生殖細胞境界部に対象物が集積していることが明らかとなった。 以上の検討より、弱アルカリ性緩衝液抽出及び密度勾配遠心分離により花粉の組織分画及び糖鎖抽出が可能になり、次年度以降に糖鎖構造の解析及び自然免疫系細胞の活性化の検討を行う予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度に実施予定の花粉からの糖鎖抽出及び分画法については、水溶性多糖、細胞画分、殻成分中から各々の多糖抽出方法が確立した。また精製においてもCRPレクチン様組換え型タンパク質を利用することで、今後の糖鎖物性解析に必要な量を得ることができた。 また、自然免疫系細胞の刺激に用いる花粉成分の分取も準備が整ったことから、当初の予定通り進展していると考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
レクチン様受容体と花粉糖鎖との反応性の検討。マクロファージや樹状細胞のレクチン様受容体の花粉糖鎖結合性を解析する目的で、組換え型レクチン-Fcタンパク質の結合特異性を利用する。さらに、花粉糖鎖の反応性を微生物糖鎖と比較する。花粉より抽出・精製した糖鎖の構造解析は、レクチンアレイ様の手法を用いて行う。高分解能2D-NMRによる糖鎖構造解析も行う予定である。レクチン様受容体発現性培養細胞を用いて、スギ花粉糖鎖による活性化を以下の点から評価する。樹状細胞の花粉糖鎖によるサイトカイン産生、補助刺激因子の発現促進。ELISA及びFACSにより、各種免疫系タンパク質発現を検討する。 これらの解析から、花粉糖鎖の自然免疫系への影響を評価する。
|
Causes of Carryover |
物品の納入価が予想よりも安かったため。 次年度の物品費に充当する。
|