2019 Fiscal Year Research-status Report
Study on cyclic polyol-based carbohydrate metabolism regulatory molecules
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18K06725
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
内山 武人 日本大学, 薬学部, 教授 (90261172)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野伏 康仁 日本大学, 薬学部, 講師 (40385977)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 環状ポリオール / α-グルコシダーゼ / 抗酸化活性 / ポリフェノール / 脂肪細胞分化 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度までに合成した21種類の1,5-annhydro-D-glucitol(1,5-AG)誘導体の合成と生物活性に関する研究結果について、論文報告をおこなった。本年度は、1,5-AG以外の環状ポリオールとして、すでに昨年度グラムスケールで大量合成に成功している5種の環状ポリオール、1,5-anhydro-D-galactitol(1,5-AGal), 1,5-anhydro-D-mannitol(1,5-AMan), 1,5-anhydro-xylitol(1,5-AXyl), 1,5-anhydro-L-rhamnitol(1,5-ARha), 1,5-anhydro-L-fucitol(1,5-AFuc)に着目し、構造活性相関の検討を試みた。 誘導体合成においては、アルコールと没食子酸の縮合試薬に向山試薬(2-Chloro-1-methylpyridinium Iodide)を用いることで、環状ポリオール類の効率的per-galloyl化に成功し、さらなる化合物ライブラリーの拡充および構築をおこなうことができた。本年度あらたに合成した環状ポリオール誘導体のα-グルコシダーゼ活性及び抗酸化活性について検討をおこなったところ、興味深いことに、1,5-AG, 1,5-AGal, 1,5-AManのそれぞれの誘導体の活性には顕著な差が認められなかった。すなわち、ヒドロキシ基の立体配置は活性に影響を与えないことが明らかとなった。この結果が何に基づくものなのか、その要因を次年度以降明らかにしていきたい。6-デオキシ糖(1,5-ARha, 1,5-AFuc)の誘導体については、galloyl基の数が減少したことにより、予想通り生物活性も減弱した。 また、本研究によりこれまで合成された環状ポリオール誘導体のいくつかには、脂肪細胞分化に影響を与える作用があることが明らかになりつつあり、その作用機序を含め、詳細については現在検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定どおり、無保護糖より簡便に大量調整が可能な環状ポリオール類を用いてgalloyl化をおこなうことで、ポリフェノール誘導体の化合物ライブラリーの充実を図ることができた。さらに、新たに合成した化合物について生物活性を検討し、昨年度とは違った観点で構造活性相関をおこなうことができた。 また、研究分担者との研究による新たな知見として、合成した化合物の中に脂肪細胞分化へ影響を与える化合物があることが判明し、α-グルコシダーゼ阻害活性や抗酸化活性とともに、抗肥満効果を見据えた今後の研究の広がりを期待させる結果を得ることができた。 以上のことにより、本研究は本年度の進捗状況としておおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
α-グルコシダーゼ阻害活性や抗酸化活性を発現するためにこれまでデザイン・合成した化合物は、アルコールとカルボン酸の縮合物、すなわちエステル結合を有するものであった。そこで、この結合様式が活性に与える影響を検討するため、あらたにエーテル結合やアミド結合に結合様式を変換した化合物の合成をおこないその活性評価をおこなう。 また、環状ポリオールとして環内に酸素原子を有しない化合物であるイノシトール類にも着目し、没食子酸誘導体の合成を試み、生物活性評価をおこなう。 一方、これまで注目してきた環状ポリオールは六員環構造を有していることから、出発物質としてリボース、アラビノースなどのペントースを用いることで五員環構造を基盤とした没食子酸誘導体の合成にもチャレンジし、より強い生物活性を有する化合物を創出したい。 また、研究分担者とともにおこなったこれまでの研究結果から、本研究において構築した化合物ライブラリーの中に、脂肪細胞分化に影響を与える化合物があることが明らかとなっている。その作用機序(GLUT4の発現など)についても、構造活性相関を含め詳細に検討をおこなっていく予定である。 さらに、研究成果公開発表(B)(ひらめき☆ときめきサイエンス~ようこそ大学の研究室へ~KAKENHI)により、本研究の成果について社会への発信・還元をおこないたい。
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Causes of Carryover |
本年度に着目した5種の環状ポリオール、1,5-anhydro-D-galactitol,1,5-anhydro-D-mannitol,1,5-anhydro-xylitol,1,5-anhydro-L-rhamnitol,1,5-anhydro-L-fuciitolは、いずれもグラムスケールで昨年度中に大量合成に成功しており、また、縮合試薬として向山試薬(2-Chloro-1-methylpyridinium Iodide)を用いるとper-galloyl化の反応が効率良くいくことを見出すことができたので、それに伴う消耗品費(ガラス器具、合成用試薬、溶媒)の支出が計上したものよりも少なかった。次年度は、消耗品費(合成用試薬、溶媒、生物活性評価用試薬・器具)及び研究報告のための学会参加旅費としての使用を計画している。
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