2019 Fiscal Year Research-status Report
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18K06730
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
佐々木 陽平 金沢大学, 薬学系, 准教授 (10366833)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 生薬生産 / 栽培と加工 / 当帰 / 芍薬 / 地黄 / 川きゅう / 附子 |
Outline of Annual Research Achievements |
生薬生産は「原植物の栽培」と「加工」の両方の技術確立で達成される。日本の環境に適した条件を設定することを目的に中国での事情調査を実施した。今年度は浙江省における「芍薬」と四川省における「附子」の2回である。いずれも中国側の大学との共同調査を行ったものである。浙江省は良質の芍薬生産地であったが急速に生産を減らしていたが,加工法の調査ができた。一方,四川省では附子生産地は秘匿性が高かったが,栽培法に関する新知見を得た。また四川省では芍薬と川きゅうの生産地も調査することができた。いずれも研究室での品質評価研究に繋がる情報を得た。 金沢大・薬用植物園ではこれまでの調査結果に基づきそれぞれの生薬原植物の栽培を実施した。まず当帰について,生産効率化に向けたペーパーポット(PP)苗栽培を開始した。過去の予備試験ではPP苗では十分な生産物が得られなかったが,播種時期,苗管理,ほ場施肥管理の工夫により同等品を得ることに成功した。また加工条件については漢方調剤時の成分溶解度の視点からも評価を行っている。当帰については先行して加工条件の検討を終え,生薬としての品質研究を開始している。芍薬は,日本と中国では加工方法が異なり,良品とされる基準も異なっていた。まず日本の良品とされる視点から見直すことにし,収穫後の根の褐変反応について研究した。関与する酵素試験方法を確立し阻害剤についての検討を実施した。地黄および川芎について,日本(金沢)と中国では気温が異なり,そのままの栽培方法を日本に導入することが困難であることから,日本独自の生産サイクルを検討した。附子については,中国の方法を踏まえて実施することにした。いずれも期待通りの収穫物を得ることに成功し,品質評価の検討を実施している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
対象とする生薬5品目(当帰,芍薬,地黄,川きゅう,附子)についてそれぞれ生産方法の検討を行った。調査結果を踏まえ,金沢の気候に適した栽培条件を導入した。その結果,期待どおりに収穫物が得られたことから,加工条件の検討とともに,栽培条件の再検討を実施している。現在までの進捗はおおむね予定どおりといえる。 当帰はPP苗からの生産物が,慣行法との品質評価の結果が得られ,この成果を論文発表した。また当帰と地黄は加工過程において含有成分が変化する。すなわち加工後は単糖類が増加することが知られていたが,従来法では正確に各成分を分離,定量することは困難であった。今回の検討より,単糖類(glucose, fructose, galactose)に加え少糖類(sucrose, raffinose, stacyose)などを定量する条件を確立することに成功した。 芍薬,地黄,川きゅうについては昨年の収穫物について加工法の検討を実施しており,今年は再現性を含めた測定が実施可能な状況にある。いずれも安定して収穫物を得られるようになったことは大きな進捗である。 附子について,今年度の調査結果を元に,冬から栽培を開始した。これも2020年5月の段階では順調に生育しており,この結果も期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
3年計画の中国での現地調査であったが,2020年5月の段階で,今年度は中国調査を実施することが困難であると判断している。しかしこれまでの2年間で全ての生薬生産地を見学し調査することを達成している。 そこで今年度は薬用植物園の試験ほ場での生産に力を入れ,再現性の研究とともに新たな視点での観察を増やすことを計画している。例えばこれまで秋収穫のみであったが,それより以前に収穫することの意味について収穫量や含有成分の点から検討する。これが実現すると収穫時期が重ならないという,生産農家にとっても効率化を計ることができるスケジュールにすることができる。 それぞれ品目別に記載する。当帰と芍薬はほぼ,金沢での栽培暦を確定したことから,加工条件の検討に集中する。地黄(秋の収穫時に損失がある)と川芎(夏の暑さに弱い)は昨年同様の栽培方法で同等の収穫物を得ることが可能か再現性をみる。附子は新たに開始した栽培スケジュールでどのような収穫物が得られるか,経時的に検討する。地黄,川きゅう,附子も並行して加工条件に関する検討を実施する。
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