2018 Fiscal Year Research-status Report
成人T細胞白血病治療薬を目指した新規天然有機化合物の探索と生物学的特性の解析
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18K06732
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
濱田 季之 鹿児島大学, 理工学域理学系, 准教授 (40321799)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 成人T細胞白血病 / 抗がん剤 / 薬用植物 / 海綿 / 紅藻 |
Outline of Annual Research Achievements |
難治性疾患のひとつである成人T細胞白血病(ATL)の治療のために、これまでの抗がん剤と異なる作用メカニズムで、かつ薬剤耐性を克服しうる新規抗がん剤の開発が求められている。最近、我々はジャマイカ産シソ科植物から薬剤耐性克服活性をもつ新規抗がん剤ヒプトシドを発見した。本研究は、ヒプトシドの探索過程で用いた手法を用いて薬用植物および海洋無脊椎動物の中からATLに対する新規リード化合物を開発することを目的とする。 厳しい生存競争の中で、植物や海洋無脊椎動物は化学的防御手段の一つとして忌避物質や誘引物質などの二次代謝産物を蓄えているといわれている。それらの二次代謝産物の中には特異な化学構造や生物活性を有しているモノが多数含まれており,全く新しい作用機序を示す抗ATL治療薬や抗がん剤が得られる可能性が高い。 薬用植物については、国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所 薬用植物資源研究センターからご提供いただいた国内産薬用植物のメタノール抽出物7,675種の中から、最終的に絞り込んだ数種のエキスについて分離・精製を進めている。 海洋無脊椎動物については,特に鹿児島県の薩南諸島(大隅諸島,トカラ列島,奄美群島など)海域に生息する海綿やソフトコーラルを中心に二次代謝産物の探索研究を行う。 本研究によって、ATLのみならず多くのがんの治療方法が改善すること、また、多剤耐性を克服しうる多くの薬剤が開発されることを期待する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新しい作用機序を有する抗がん剤を開発するためには、多種多様な化学構造を有する候補化合物を必要とし、それらの候補化合物を得るためには、探索源である生物の多様性が必要になる。本研究における生物試料の探索源としては、薩南諸島を基点とした国内の薬用植物や海洋無脊椎動物を用いている。 今回、国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所 薬用植物資源研究センターとの共同研究において、ご提供いただいた国内産薬用植物のメタノール抽出物7,675種の中から抗ATL活性がかなり強い(IC50値が0.1 microgram/mL)3種の植物から抗ATL化合物が単離、構造決定できており、今後同様の方法で更なる抗ATL化合物の探索が可能である。また、鹿児島産紅藻ハナヤナギからは3種の抗ATLトリテルペノイドを単離した。それらは新規炭素骨格を有しており、新しい作用機序を示す抗ATL治療薬や抗がん剤が得られる可能性が高い。
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Strategy for Future Research Activity |
薬用植物については、薬用植物資源研究センターからご提供いただいた試料の中から新規抗ATL化合物が含まれている可能性が高い植物エキスを選択し、分離、精製を進める。 海洋無脊椎動物については、特に鹿児島県の薩南諸島(大隅諸島,トカラ列島,奄美群島など)海域に生息する海綿やソフトコーラルを中心に二次代謝産物の探索研究を行う。スキューバダイビングやドレッジ採集によって少量ずつ採集する。 得られた抗ATL化合物については、正常ヒト活性化リンパ球を用いた細胞傷害性も試験し、安全域について検討するとともに、K3T, Jurkatなどの白血病細胞株、A549(肺がん細胞)、SW480(大腸がん細胞)などの患者数の多い臓器(組織)のがん細胞株、そして、MDR1などを高発現した多剤耐性がん細胞株についての細胞傷害性を試験し、IC50値にて評価する。
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Research Products
(7 results)