2019 Fiscal Year Research-status Report
植物由来ステロイドをモチーフとした新規がん分子標的治療薬シーズの探索
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18K06735
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Research Institution | Tokyo University of Pharmacy and Life Science |
Principal Investigator |
横須賀 章人 東京薬科大学, 薬学部, 准教授 (20318190)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ステロイド / がん分子標的 / 微小管 / 細胞周期 / 細胞毒性 / アポトーシス |
Outline of Annual Research Achievements |
植物由来のステロイド化合物に着目し、細胞分裂期のがん細胞にのみ作用する「がん分子標的治療薬シーズ」を見出すことを目的に研究を進めている。3種のキンポウゲ科植物(Helleborus foetidus、Helleborus lividus、Helleborus niger)、1種のイネ科植物(Avena sativa)、1種のキョウチクトウ科植物(Trachelospermum asiaticum)を研究材料として、植物由来ステロイド化合物に着目した成分探索を行った。その結果、28種の新規化合物を含む43種のステロイド誘導体を単離・構造決定した。これらの植物のメタノール抽出エキスを、HL-60ヒト白血病細胞およびA549ヒト肺がん細胞に対する細胞毒性を指標に活性成分の分離を行った。その結果、Helleborus nigerから新たに新規1種を含む3種のbufadienolide 誘導体と新規1種を含む5種のecdysteroid誘導体を、Trachelospermum asiaticumから2種のpregnane誘導体を単離した。単離化合物の構造を、NMRを中心とした機器スペクトルの解析と加水分解により決定した。単離された化合物のHL-60およびA549細胞に対する細胞毒性を評価した結果、数種の化合物に細胞毒性が認められた。細胞毒性を示した化合物のHL-60細胞に対するアポトーシス誘導活性を、細胞の形態変化、DNAの断片化、caspase-3の発現を確認することにより評価した。さらに、細胞毒性を示した化合物および過去の研究で単離・構造決定した植物由来ステロイド化合物で処理したHL-60細胞の細胞周期を解析した結果、Helleborus foetidusから単離されたbufadienolide誘導体に、培養時間10時間で、アポトーシス細胞に特徴的なsub-G1ピークの上昇が確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度は、2018年度に引き続き、3種のキンポウゲ科植物(Helleborus foetidus、Helleborus lividus、Helleborus niger)と新たに1種のキョウチクトウ科Trachelospermum asiaticumを研究材料として用い、HL-60およびA549細胞に対する細胞毒性を指標に、植物由来ステロイド化合物に着目した成分探索を継続して行った。その結果、Helleborus nigerから新たに新規1種を含む3種のbufadienolide 誘導体と新規1種を含む5種のecdysteroid誘導体を, Trachelospermum asiaticumから2種のpregnane誘導体を単離した。現在までに28種の新規化合物を含む43種のステロイド誘導体を単離・構造決定している。また、単離された化合物のHL-60およびA549細胞に対する細胞毒性とアポトーシス誘導活性を評価した。HL-60細胞に対して細胞毒性を示した化合物および過去の研究で単離・構造決定している植物由来ステロイド化合物の細胞周期解析を行った。化合物の濃度と細胞との接触時間を、生細胞の割合を経時的に観測することにより検討し、細胞周期解析の実験条件を検討した。それらの化合物のうち、Helleborus foetidusから単離されたbufadienolide誘導体の細胞周期を検討した結果、接触時間10時間において、HL-60細胞に対してアポトーシスに特徴的なsub-G1ピークの上昇が確認された。現在までに、HL-60細胞に対して細胞周期を細胞分裂期で顕著に停止する化合物はないが、低濃度でアポトーシスを誘導する化合物を数多く見出している。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度までに、HL-60ヒト白血病およびA549ヒト肺がん細胞に対する細胞毒性を指標に、3種のキンポウゲ科植物、1種のイネ科植物、1種のキョウチクトウ科植物から、合計43種の植物由来ステロイド化合物を単離・構造決定した。さらに、単離された化合物の細胞毒性とアポトーシス誘導活性を評価し、細胞周期を解析した。現在までのところ細胞周期を顕著に停止する化合物はないが、HL-60細胞に対して低濃度でアポトーシスを誘導する化合物を数多く見出している。 2020年度は、ステロイド系化合物が含まれることが推定される植物の抽出エキスから、培養腫瘍細胞に対する細胞毒性を指標に新規ステロイド化合物の探索を継続して行うとともに、本研究課題および過去の研究で単離・構造決定している植物由来ステロイド化合物を用いて、以下の項目について研究を進めていく。 1)植物由来ステロイド系化合物のアポトーシス誘導能とcaspase類などのアポトーシス関連分子の活性化の評価 2)植物由来ステロイド系化合物の細胞周期解析、および細胞分裂期における錘体形成の判定
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Research Products
(6 results)