2018 Fiscal Year Research-status Report
昆虫由来のエリシターを利用したセリ科薬用植物の機能性強化に関する研究
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18K06738
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
田中 謙 立命館大学, 薬学部, 教授 (60418689)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 化学生態学 / 生薬学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究で使用するセリ科薬用植物の種子は、表面に凹凸があり油性成分でおおわれているため、無菌発芽に際して汚染率が高く、一方で発芽率が低い状況であった。そこで、実験に使用する培養植物を大量に調製するため、ボウフウ種子の無菌発芽条件について検討した。殻のままのボウフウ種子を純水中で約30分間吸水させた後、殻および種皮を除去して、70%エタノールに1分間浸漬した。その後、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレートを0.1%になるように添加した次亜塩素酸溶液で種子を殺菌した。滅菌水による洗浄を繰り返し行い、MS培地に播種した。これにより、汚染率(3%以下)を低下させ発芽率(56%)を著しく改善することが可能となった。 これまで、シロイヌナズナなどのモデル植物以外では、遺伝子に関するデータベースは限られており、RT-PCRを行うためのプライマー設計に必要な情報が非常に得にくい状況にあったが、ボウフウに関しては、2018年LiuらによりRNA-Seqデータが公開された。そこで、入手したRNA-Seqデータからde novoアセンブリによりコンティグを作成した。作成したボウフウのコンティグ配列に対して、同じセリ科植物であるDaucus carotaの遺伝子をクエリー配列としてBLAST検索でジャスモン酸生合成に関与する各遺伝子のコンティグ配列を取得しプライマーを設計した。作成したプライマーを評価するために、リアルタイムPCRの結果から増幅効率を求めたところ90%~110%の範囲に収まることが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験に使用するボウフウの無菌発芽条件について検討し、汚染率を低下させ発芽率を著しく改善できたことから培養植物を大量に調製することが可能となった。さらに、ボウフウに関するゲノム情報が少ない状況にもかかわらず、ジャスモン酸生合成に関与する遺伝子の発現解析に使用する良好なプライマーを調製できたことから、今後、キアゲハ幼虫の吐き戻し液から見出したエリシターが二次代謝物の産生を誘導する機構解明の進展が図れることとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
ボウフウに対してエリシターによる二次代謝誘導を行い、ジャスモン酸生合成に関与する19遺伝子(FAD, DAD1, DGL, 13-LOX1,13- LOX2, AOS, AOC, OPR2, OPR3, OPCL1, JAR1, JMT, COI1, JAZ1, JAZ2, MYC2, CHIB/PR3, LEC, VSP2)の発現量をRT-PCRにより解析する。さらに、ジャスモン酸誘導以降の生合成遺伝子の発現を詳細に解析する。
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