2018 Fiscal Year Research-status Report
マダガスカルで採集した固有種からの医療用天然物の探索
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18K06740
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Research Institution | Yasuda Women's University |
Principal Investigator |
大塚 英昭 安田女子大学, 薬学部, 教授 (00107385)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松浪 勝義 広島大学, 医歯薬保健学研究科(薬), 教授 (70379890)
稲垣 昌宣 安田女子大学, 薬学部, 准教授 (90274480)
川上 晋 安田女子大学, 薬学部, 助教 (10611311)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | マダガスカル / ジテルペン / セスキテルペン / Croton |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度に安田女子大学より学術研究助成費が支弁され、マダガスカルに赴き9種の固有植物の採集を行った。マダガスカルの国立機関であるCNARPに採集植物の抽出を依頼し、エキスを送付いただいた。以前より興味を抱いていたクロトン属の植物の成分分離を行った。Croton radiatusからは既知化合物である4-epi-kaurenic acidとacetylsventenic acidが単離された。また、Croton jennyanusからは既知化合物kaurenic acidと(+)-hardwicklic acidとともに新規化合物であるクレロダン型ジテルペンを単離した。本化合物はヘミアセタール構造を有する事から互変異性を示し、1H-NMRスペクトルおよびHPLC分析により溶液中での互変異体の存在比は大凡7:3であると推定された。絶対立体配置は未決定である。今回の採集ではC. radiatusおよびC. jennyanusのエキス量がそれぞれ18gと19 gで有ったため、さらに採集量を増やして、成分探索の必要がある。送付されたエキスのヒト肺胞基底上皮腺癌細胞であるA549と発展途上国で憂慮されているリーシュマニア症原因原虫であるLeishmania majorに対する細胞毒性を調査した。A549細胞に対しては日本には無い科の3種のSarcolaenaceae植物と、Asteropeiaceae植物が強い阻害活性を示した。 L. majorに対しては特にC. jennyanusが強い活性(IC50: 60.2 μg/mL)を示した。C. jennyanusのエキスはA549細胞に対しても比較的強い阻害活性をIC50: 63.2 μg/mL示した。マダガスカル人から提供されたキク科植物Distephanus trinervis葉部の殺蚊幼虫活性物質の探索を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要にも示したが、新規物質の単離、またエキスの活性検討の結果、期待される植物もあり、おおむね順調に進展しているといえる。ただ、植物エキス量が少ないため、更なる成分検討が出来ない状態で、最終的な活性成分にたどり着けないでいる。さらに、令和元年にも安田女子大学の学術研究助成費の申請が採択され、再びマダガスカルへ植物採集旅行が実施されるにいたっている。初期の採集で、採集量が少量のため活性成分にたどり着けない植物の増量並びに新規植物の入手を目指して、研究の推進を計りたい。
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Strategy for Future Research Activity |
令和元年度も一昨年と同様に、安田女子大学学術研究助成費によりマダガスカルの調査研究費が予定されている。一昨年の調査研究で採集した植物のうちクロトン属2種の植物からは期待できる結果が得られているが、パイロット的採集量であったため、更に詳細な検討が行えないでいる。今回の採集ではクロトン属2種の植物を大量に採集して今後の研究に資する予定である。また、ヒト肺胞基底上皮腺癌細胞であるA549に対して強い阻害活性を示した、3種のSarcolaenaceaeの成分検討を開始するとともに、やはりサンプル量の問題が生ずると思われるので、3種の内、一つは大量に採集する予定である。残りの植物サンプルについても、順次成分の予備的検討をおこなう。また、先導的サンプルとして、新たに、科の異なる三種から四種の固有種を選び、採集することにしている。本大学の援助と本研究費を有効に組み合わせて、最大限の効果が得られるように研究を展開する。植物エキスの生物活性については、安田女子大学薬学部の天然物研究室以外に呼びかけて、新しいアッセイ法の導入を図る予定である。抗リーシュマニア活性がCroton jennyanusに見られており、同様に活性成分の検討をおこないたい。キク科植物Distephanus trinervis葉部の殺蚊幼虫活性物質の探索で蚊で媒介されるリーシュマニアの予防、抗リーシュマニア活性物質の探索で治療と両面にわたる、成果が得られることを期待している。抗ノロウイルス、抗インフルエンザウイルスなどウイルスに対する阻害活性を指標とするアッセイ系を確立して、発展途上国で深刻な問題となっている、ウイルス性疾患の撲滅に寄与できる方向性を確立したい。
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Causes of Carryover |
大学支弁の個人研究費ならびに講座費の利用、また、取得した他の科学研究費を総合的に判断して使用したこと、ならびに本年度の配分額が比較的小額であることを勘案して、本年度も適正に十分な研究が遂行できるように配慮した。
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Research Products
(5 results)