2018 Fiscal Year Research-status Report
Studies on intracellular and extracellular pathways involved in drug-induced pulmonary fibrosis
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18K06749
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
湯元 良子 広島大学, 医歯薬保健学研究科(薬), 准教授 (70379915)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 薬学 / 薬剤性肺障害 / 上皮間葉転換 / 細胞周期停止 / サイトカイン / TGF-β1 |
Outline of Annual Research Achievements |
薬剤性肺障害、特に肺線維症の致死率は高く、極めて重篤な障害であるが、その発症機構を細胞・分子レベルで解析した報告は乏しい。我々はこれまで、肺胞上皮II型細胞の形質を持つヒト由来A549細胞などを薬剤処置することによってtransforming growth factor (TGF)-β1と類似した筋線維芽細胞への形質転換 (epithelial mesenchymal transition : EMT) 様変化が起こることなどを見出した。本研究ではA549細胞を用い、薬剤処置による細胞内経路を介したEMT誘発と細胞外分泌因子が関与するEMT誘発経路の両面から解析を進め、以下のような結果を得た。 1.肺障害性を有する抗がん剤メトトレキサート (MTX)、ブレオマイシン (BLM)、パクリタキセル (PTX)でA549細胞を処置した。フローサイトメトリーを用いてGatingした結果、MTXは細胞周期をS期に停止させ、BLMおよびPTXはG2/M期に停止させ、いずれの処置においてもα-SMAタンパク質の発現はG1期に比較して、S期およびG2/M期で顕著な増加が認められた。 2.チミジン (THY) あるいはノコダゾール (NOC) で細胞周期をS期あるいはM期に同調させたA549細胞にTGF-β1および上記薬剤を処置したところ、THYおよびNOC単独処置によって有意に上昇したα-SMAタンパク質の発現は、TGF-β1処置によってさらに増強された。一方、いずれの抗がん剤もTHYおよびNOCによるα-SMAタンパク質の発現上昇を亢進させなかった。 3.MTX処置したA549細胞において培養液中へのIL-6の分泌量は経時的に増加した。さらに葉酸共存によってIL-6の分泌量は有意に減少し、MTXによるEMTもほぼ完全に抑制された。 従って、細胞周期の停止およびIL-6が薬剤誘発性EMTに深く関与する可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、細胞内経路を介したEMT誘発にはS期およびG2/M期での細胞周期の停止が関与していること、また細胞外分泌因子としてはIL-6がEMT誘発に関与していることを明らかにした。しかし、細胞周期に関する検討に時間を要したため、転写因子であるactivating transcription factor 3 (ATF3)遺伝子の発現変動とEMT誘発の関連性に関しては、次年度以降に行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
1. 肺障害性薬剤およびTGF-β1で処置したA549細胞における転写因子であるactivating transcription factor 3 (ATF3)遺伝子の発現変動を測定し、α-SMAの発現変動との相関性について考察する。さらにヘテロな集団と考えられるA549細胞を限界希釈法で培養し、ATF3の薬剤応答性が安定して高いA549/ATF3細胞をクローニングし、さらにその細胞からATF3 knockout A549細胞を作出する。これら細胞を用い、令和2年度以降に肺障害性薬剤およびTGF-β1のEMT誘発効果に対するATF3 knockoutの影響について検討し、ATF3発現とEMT誘発の関連性を明らかにする。 2. MTX処置48、72、144時間後における細胞から分泌されたIL-6の濃度を測定し、それらの濃度のIL-6を未処置細胞に添加することによって、EMTが誘発されるか否か検証する。 3. 肺線維症モデル動物(ラットおよびマウス)を作製するため、BLM 、MTX、PTXの至適投与方法を決定する。肺線維症モデル動物の肺組織あるいは単離した肺胞上皮II型細胞からtotal RNAを抽出し、マイクロアレイ解析することによって、肺線維症発症による遺伝子発現変動が、EMT誘発培養細胞と同様にin vivoでも観察されるか否か検討する。さらに、モデル動物のBALF中サイトカインをELISAで定量し、EMT誘発培養細胞から分泌された因子と比較する。 以上の検討により、肺障害性薬剤による肺線維症誘発に関わる分子機構を細胞内経路、細胞外経路の両面から解明するとともに、それに基づき新たな予防法や治療戦略を考察する。
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Causes of Carryover |
研究はおおむね順調に進展しているが、細胞周期とEMTの関連解析に時間を要したため、今年度の実験計画のうち、ATF3 knockout A549細胞の作出および肺線維症モデル動物の作出を次年度に移行させ、そのための研究費を次年度に繰り越した。
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Research Products
(14 results)
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[Journal Article] Folic acid prevents methotrexate-induced epithelial-mesenchymal transition via suppression of secreted factors from the human alveolar epithelial cell line A5492018
Author(s)
Kawami, M., Harabayashi, R., Harada, R., Yamagami, R., Yumoto, R. and Takano, M.
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Journal Title
Biochem. Biophys. Res. Commun.
Volume: 497
Pages: 457-463
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] P-gp modulating effect of Azadirachta indica extract in multidrug-resistant cancer cell lines2018
Author(s)
Kawami, M., Yamada, Y., Issarachot, O., Junyaprasert, V. B., Yumoto, R., Takano, M.
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Journal Title
Pharmazie
Volume: 73
Pages: 104-109
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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[Journal Article] Functional expression of breast cancer resistance protein and cholesterol effect in human erythrocyte membranes2018
Author(s)
Takano, M., Higashi, M., Ito, H., Toyota, S., Hirabayashi, Y. and Yumoto, R.
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Journal Title
Pharmazie
Volume: 73
Pages: 700-705
DOI
Peer Reviewed
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