2019 Fiscal Year Research-status Report
リキッドバイオプシーによる膵癌化学療法の治療最適化システム
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18K06765
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Research Institution | Kyoto Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
伊藤 由佳子 京都薬科大学, 薬学部, 講師 (30278444)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | リキッドバイオプシー / 膵癌 / circulating tumor cell / 同所移植 / 癌化学療法 / PK-PD |
Outline of Annual Research Achievements |
リキッドバイオプシーによる血中循環腫瘍細胞( CTC) が癌の進行・転移を反映し予後改善のバイオマーカーとなることが、多くの研究成果から認められてきた。しかしながら、CTCに基づいた治療法の確立は依然として定着されていない。そこでCTCに基づく治療戦略の提案を目指して、申請者はリキッドバイオプシーによるCTCと血中抗癌剤濃度をPK/PD理論を基盤とした用量調節と予後改善に寄与するための膵癌化学療法の構築を目的として検討中である。今年度の実績としては、ヒト膵癌SUIT-2細胞に蛍光タンパク(GFP)を導入したのGFP SUIT-2同所移植モデルマウスまたは皮下移植マウスを作製したのち膵癌標準レジメンのFOLFIRINOXをおこない、無処置群および治療群におけるCTCの検出数を治療前と治療後について比較したところ、2種の移植モデルマウス、すなわち皮下および同所移植モデルにおいて、治療群における有意なCTCの低下を認めた。皮下移植と同所移植との比較では、CTCは同程度であった。また、治療効果の観察結果から、皮下移植と同所移植を比較したところ、原発巣の縮小と肺転移、肝転移を蛍光観察から両移植モデルにて確認した。しかしながら、同所移植モデルにおける治療効果のモニタリングにおいて非侵襲的蛍光観察では詳細な経過を確認することは不向きであることを認めた。また、薬物動態学的評価についても、両移植モデルにおいて経時的に血液を採取して治療時の体内動態について無処置群との比較目下検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
同所移植モデルでのCTC検出について、無処置群と治療群において比較したところ、治療群での有意なCTCの低下が認められた。一方、治療効果の指標として原発巣の非侵襲的評価法として蛍光観察を試みたが、腹腔内部に原発巣が存在することから詳細に治療効果を検証することが困難であることが認められた。また、癌の進行に伴う転移巣については肺と肝臓において認められたが、同所移植モデルでは腹膜播種が先行することから、転移巣の検出を待たずに腹膜播種にて死亡に至ることが確認されたため、本課題の膵癌化学療法時のCTCと薬剤濃度をモニターする際の比較対照として、皮下移植xenograftモデルでの評価も並行して進めてきた。その結果、同所移植モデルと皮下移植モデルにおける無処置群での腫瘍形成から転移巣進展に至るまでの経過観察から、CTC検出と組織学的評価について有意な差は認められず、癌の深達度も同程度であった。さらに、同所移植モデルマウスと皮下移植xenograftマウスの2種のモデルマウスにおいて、無処置群と治療群に分けて、レジメンに従って治療実施後、治療後CTCは2種のモデルマウスにおいて無処置に対して有意に低値を示した。転移巣については2種のモデルマウスでは、皮下移植xenograftモデルにおいて明らかな肺転移、肝転移を認め、転移箇所は同所移植モデルに対して高値であった。一方、同所移植モデルマウスにおいても転移巣を認めたが腹膜播種の影響が強く認められ、治療効果を非侵襲的モニターには同所移植モデルでは容易ではないことを認識した。さらに、膵癌化学療法の評価において、治療群および無処置群の2群に分けて、治療群でのCTCの検出を、治療前、治療中期、治療後期に分類して、CTCの変化と薬剤濃度の変化について目下集計しているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
膵癌モデルマウスにおけるCTCの検出が認められたことから、治療と並行してCTCを定期的に測定し、癌の進展への影響と、抗がん剤濃度との関連性を確かめるべく、レジメンにしたがって、治療初期、中期、後期とわけてCTCの検出の変化について検証し、用量調節へ反映させることと、癌の進展との関連性について明らかとすることによって、CTCの予後予測のバイオマーカーとしての有用性を示していく予定である。
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Causes of Carryover |
旅費に関して、近隣での学会が多かったため予算額を下回ったが、共同研究機関との検体の運搬費等に充当させることができ、結果として100円未満となったことから、妥当な使用金額であったと考えている。
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Research Products
(14 results)