2018 Fiscal Year Research-status Report
がん組織血管の透過性増強を基盤とした高分子性抗がん剤の集積増強法に関する研究
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18K06773
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Research Institution | Sojo University |
Principal Investigator |
中村 秀明 崇城大学, 薬学部, 講師 (30435151)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ブラジキニン / EPR効果 / 高分子性抗がん剤 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、血管透過性亢進ペプチドであるブラジキニン(BRK)の作用に着目し、がん組織にBRKを選択的に作用させることで、がん組織の血管透過性および血流の改善を行うことができるか。さらに、がん組織への高分子性抗がん剤の送達が増強されるかを明らかにすることを目的としている。本年度は、がん組織選択的に作用することを企図した、HPMAコポリマー結合型ブラジキニン(P-BRK)の合成を行い、以下の知見を得た。(1)平均分子量が約40,000、ブラジキニン含量が約10 wt%のP-BRKを調製した。(2)酸性pHにおいて、P-BRKから遊離のBRKの放出が促進された。(3)ラット皮膚を用いて血管透過性亢進活性の検討を行ったところ、P-BRKの血管透過性亢進活性は遊離ブラジキニンの25%程度であった。(3)C26(マウス結腸がん細胞)担がんマウスを用い、BRKおよびP-BRKを腫瘍内へ投与し、次いで高分子性抗がん剤のモデル薬物である蛍光標識ウシ血清アルブミン(Cy5.5-BSA)を尾静脈より投与した。in vivo光イメージング装置を用いて、Cy5.5-BSAの腫瘍内集積量を検討したところ、BRKおよびP-BRK腫瘍内投与によりCy5.5-BSAの腫瘍内集積量は10-20%向上した。(4)P-BRKおよびCy5.5-BSAを尾静脈から併用投与することにより、Cy5.5-BSAの腫瘍への集積量は約2倍程度向上したが、他臓器へのCy5.5-BSAの集積量に変化は見られなかった。また、遊離ブラジキニンの併用投与では、Cy5.5-BSAの腫瘍および正常臓器への集積量に変化は見られなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
HPMAコポリマー結合型ブラジキニン(P-BRK)の合成に関して、ペプチダーゼ耐性ブラジキニン(RIBRK)や、受容体選択的なP-BRKの調整も同時に行っており、順調に進展している。遊離ブラジキニンおよびその他ブラジキニン誘導体の血中安定性に関する検討は完了しているが、P-BRKの血中安定性に関する検討が完了していない状況であり、次年度に継続して行う予定である。P-BRKの血管透過性亢進活性は細胞レベルおよび個体レベルで行う予定であり、現在ラット皮膚を用いた検討において良好な結果が得られている。ヒト血管内皮細胞を用いて一酸化窒素や細胞内カルシウムの放出を検討しているが、条件検討が必要な状況であり、次年度も継続して行っていく。がんモデルマウスにおける検討に関して、Cy5.5-BSAを用いた腫瘍集積性の増強作用の検討を行っている段階であり、P-BRKの濃度依存性ならびに時間依存的な作用を明らかにしている。検討項目に関し、進捗状況にバラツキはあるものの、概ね順調に推移できている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度はP-BRKの合成ならびに、がんモデルマウスにおいて高分子モデル薬物(Cy5.5-BSA)を用いた検討を行い、P-BRKの併用投与によりCy5.5-BSAの腫瘍集積性が向上することを明らかにした。また、投与量や投与タイミングの検討を行った。次年度以降は、P-BRKにより高分子性抗がん剤の抗がん効果が増強するのかを明らかにすることを目的とする。高分子抗がん剤ならびにP-BRKの併用投与により、がん体積の縮小ならびに生存率に向上がみられるのかを明らかにする。また、P-BRKの作用メカニズムを明らかにするために、高分子抗がん剤の腫瘍集積性ならびに腫瘍組織内分布に変化がみられるかを検討する。本年度に使用したC26(マウス結腸がん細胞)マウスはEPR効果が比較的高いがんモデルマウスであるため、高分子性抗がん剤の効果が低い、がんモデルマウスを用いることで、高分子性抗がん剤を用いたがん治療におけるP-BRKの有用性を明らかにしていく。
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Causes of Carryover |
本年度の研究計画に必要な物品・試薬に関して、可能な限りキャンペーン等を利用して必要量を購入したため、若干の余剰がでた。次年度以降の物品購入に使用する予定である。
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