2018 Fiscal Year Research-status Report
ヒト iPS 細胞由来血液脳関門モデルを用いた病態モデルの構築
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18K06777
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Research Institution | National Institutes of Biomedical Innovation, Health and Nutrition |
Principal Investigator |
川端 健二 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所, 医薬基盤研究所 幹細胞制御プロジェクト, プロジェクトリーダー (50356234)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | iPS 細胞 / 疾患モデル / 虚血性脳血管障害 |
Outline of Annual Research Achievements |
虚血性脳血管障害は脳血管の塞栓によって発症する。グルコースや酸素の供給が滞ることで本来の血管内皮細胞の性質が失われ、結果として血液-脳関門(BBB)の破綻が起きることは広く知られているものの、in vitro の良い病態モデルが存在しないため、iPS 細胞を用いた病態モデルの確立を試みた。 虚血状態を模倣するためにヒトiPS細胞由来脳血管内皮細胞をグルコース非存在下かつ低酸素条件で培養したところ、バリア機能が著しく減弱した。虚血を発症した後、血栓が取り除かれることで血液の再灌流が起こるが、その状況を再現するために虚血条件下に曝したヒトiPS細胞由来脳血管内皮細胞に対してグルコースや酸素を再供給したところ、バリア機能が12時間程度で回復した。齧歯類由来の内皮細胞を用いた従来の報告と比べて再灌流後のバリア機能の回復が極めて早いことから、ヒトiPS細胞由来脳血管内皮細胞は恒常性の維持能力が高いことが示唆された。 虚血時には脳内に存在する細胞によって数多くの炎症性メディエーター放出されることが知られている。そこで、各種炎症性メディエーターが膜間電気抵抗値におよぼす影響を調べたところ、TNF-a が最もバリア障害能が高いことが明らかとなった。 TNF-a は主にアストロサイトやミクログリアから放出される。そこで、再灌流条件時において TNF-a をヒトiPS 細胞由来脳血管内皮細胞に対して作用させたところ、再灌流条件で観察されたバリア機能の回復が著しく妨げられた。ただし、TNF-a の作用メカニズムについては脳血管内皮細胞へのアポトーシスを介さないものであった。以上より、本研究では酸素濃度、グルコース供給に加えて、周囲の細胞が産生する炎症性メディエーターに対しても考慮した虚血性脳血管障害モデルを確立した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は、ヒト iPS 細胞を利用した血液-脳関門(BBB)モデルを利用して、虚血性脳血管障害の病態を in vitro で反映させることができた。すなわち、虚血時および再灌流時の BBB バリア能の変化について培養条件を変動させることにより再現させることに成功した。また、虚血性脳血管障害が生じる原因物質を網羅的に探索した結果、 TNF-a を同定することに成功した。したがって、当初の予定通り順調に進捗しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
近年、種々の疾患において BBB の障害が報告されている。本年度は、虚血性脳疾患における BBB バリア能の低下について検討した。今後は、他の疾患における BBB バリア能の変化について検討する必要がある。重症熱中症患者の一部では BBB の破綻により脳浮腫や意識障害を呈することが知られている。そこで、ヒト iPS 細胞を用いて、熱中症時の BBB のバリア能が障害される病態を in vitro で再現し、障害に関与する分子を探索する。
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