2020 Fiscal Year Research-status Report
小児発達の個体差を考慮した症例追跡に基づく薬物動態解析と長期投与の適正化支援
Project/Area Number |
18K06780
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
田口 雅登 富山大学, 学術研究部薬学・和漢系, 准教授 (20324056)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
市田 蕗子 富山大学, 事務局, 学長補佐 (30223100)
廣野 恵一 富山大学, 学術研究部医学系, 講師 (80456384)
吉田 丈俊 富山大学, 学術研究部医学系, 特命教授 (90361948)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 右心不全 |
Outline of Annual Research Achievements |
小児期は発達に伴う薬物動態の変動が大きいため、小児は薬物投与の個別最適化が必要な集団の一つである。本研究では、小児薬物療法の個別化を推進するため、新生児から小児期における薬物体内動態変化に関する情報を得るとともに、薬物動態の共変量とその裏づけとなる根拠を追加し、これまでの研究を発展させる。3年目は最終年度の予定であったが、COVID-19の感染対策を徹底したため、当初の計画通りに研究を遂行することができなかった。研究概要は以下の通りである。 マシテンタンの体内動態に及ぼす小児の発達変動と併用薬の影響:小児におけるマシテンタンと活性代謝物の血漿中濃度にはそれぞれ最大13.2倍、9.7倍の個体差が観察された。マシテンタンのクリアランス(CL/F)の共変量の一つである発達変動の記述にはアロメトリー式が有用であることが明らかとなった。さらに、ボセンタン投与歴の有無によってCL/Fが異なるか否かを長期追跡によって評価したが、予想に反して明らかなCL/Fの変動は認められなかった。 2.新生児患者におけるカフェインの体内動態解析:新生児無呼吸発作の治療のためにカフェインを服用中であった10名の新生児の残血清を使用し、クリアランス算出を試みた。カフェインの代謝酵素であるCYP1A2の発現量や腎機能は出生後から著しく変化すると想定されたが、本研究の結果、クリアランスは文献値より想定される新生児の糸球体ろ過速度の1/20程度の低い値であった。また、少なくともカフェイン投与を必要とした修正日齢240日までは、代謝物(PX、TP、TB)の血中濃度は低く、肝代謝の寄与は殆どない(CYP1A2の発現が無い)と考えられた。このことは、新生児期のクリアランス変動を数式モデル化するにあたり、薬物代謝酵素の発現変動の数理モデルを導入する必要性が低い事を示唆するものと推察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
COVID-19の感染対策のため、当初の計画通りに研究を遂行することができなかった。より具体的には、患者の定期処方が長期投与となり、来院インターバルが延長したことによって採血(受診)頻度が低下し、欠損データの症例数が増加した。 また、通常の研究活動が制限されたことから、幼若動物(ラット)等を用いた薬物動態の発達変動評価など、当初計画した動物実験はすべて中止した。
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Strategy for Future Research Activity |
肺高血圧による右心不全が顕著な症例では、マシテンタンのCL/Fが上昇傾向にある事が観察されている事から、申請者らは「消化管の浮腫によってマシテンタンの吸収(F)が低下する」との仮説を立て、今後その検証を図る方針である。 右心不全モデル動物には、古くから利用されてきたモノクロタリン誘発肺高血圧症モデルを用いる。モノクロタリン投与によって肝薬物代謝機能が低下するとの文献報告を踏まえ、消化管薬物吸収実験のプローブ薬にはポリエチレングリコール(PEG)を利用する。肺高血圧による門脈圧亢進に伴う消化管の組織学的病変についても観察を試みる計画である。
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Causes of Carryover |
COVID-19の感染拡大に伴い、研究計画の遅れが生じたため。
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Research Products
(2 results)