2019 Fiscal Year Research-status Report
薬物の溶解状態の動的変化を組み込んだ消化管吸収シミュレーションシステムの研究
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18K06794
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Research Institution | Josai University |
Principal Investigator |
関 俊暢 城西大学, 薬学部, 教授 (60196946)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 消化管吸収 / in vitroモデル / 高分子ナノフィルム |
Outline of Annual Research Achievements |
薬物の吸収過程をin vitroにて評価可能な実験系を確立するため、種々検討を行った。その内容は現時点で大きく2つに分類することができる。 1つは、in vitro消化管モデルを用いた難溶解性薬物の過飽和状態の形成とそれによる吸収の促進で、これに関しては、フルルビプロフェンとケトコナゾールをモデル薬物として検討している。現在までに得られている結果として、フルルビプロフェンでは、pHシフトによって過飽和を形成させてもその持続時間が短く、吸収の増加も少なく、場合によって吸収が低下することも観察されるのに対して、ケトコナゾールでは、ミクロな油相が形成され、それが持続的であるだけでなく、膜への薬物分配に直接関わることで、透過量が大きくなり、過飽和現象の利用が有効であった。 2つ目は、高分子ナノフィルムの調製とその吸収モデル膜としての利用で、ポリ乳酸とポリ乳酸ーグリコール酸共重合体を用いることで、薬物の透過速度を制御できるだけでなく、消化管粘膜などに存在する水溶性化合物も透過可能な細胞間隙ルートを再現できることも示している。この膜を消化管モデルに用いることで、in vitroでの薬物吸収の評価が、安価で動物を用いることなく、実施でき、大変有効であると考えている。 薬物の消化管吸収を動物を用いることなく評価する実験系は、動物愛護の面で有効であるが、それだけに留まらず、in vitroでのみ設定可能な各種条件を簡単に実現できる点も利点である。過飽和状態に及ぼす各種消化管要員の調査や、消化管粘膜を模倣する高分子名のフィルムの利用は、本研究の目的を達成するための有効な情報になると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
消化管モデルの全体デザインよりは、それを評価するために必要な周辺情報の収集において大きな成果が得られた。特に、薬物による過飽和効果の違いは、さらに消化管内の要因、例えば食事の影響など、関連する事柄との詳細な関係の解析は不可避であるが、in vitro研究系は、それらの実施に適しており、本研究の意義を明確に示す意味において、良い情報が得られてると言える。 高分子ナノフィルムについても、当初、膜厚の薄さと関連して、ハイスループット素材としての効果を期待していたが、そのような利点よりも、膜厚が薄いことによるミクロ相分離の効果が明確に現れることの方が利点として強調できることがしまされた。この膜の消化管モデルへの適用は、人工膜による薬物吸収の予測において、新しい視点を提供するものと大いに期待している。 これら全体の研究の成果から、本研究は概ね順調に進行していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、難溶解性薬物の過飽和状態の形成とそれによる吸収の促進で、フルルビプロフェンとケトコナゾールでなぜ結果に大きな違いが生じるのか、メカニズムベースで詳細に検討を加える。フルルビプロフェンで、pHシフトによって過飽和を形成した状態が、分子としてどのようなものであるのかの調査も行う。場合によって吸収が低下することも観察されるが、その理由についても明確にしていく。一方、ケトコナゾールでは、ミクロな油相が形成され、それが持続的であるだけでなく、膜への薬物分配に直接関わることで、透過量が大きくなったと考えているが、そのことを明確にするように他の実験手法も適用し検討を進める。また、消化管内で生じ得る様々な環境変化が、結果にどのような影響をもたらすかについても検討する。 高分子ナノフィルムについては、用いる材料や添加成分について検討を行い、生体膜の模倣をより色々な観点から検討し、その実証を試みる。高分子名のフィルムの各種装置への適用のための成形方法についても検討を行う。
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